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VARIANTAS外伝 LastWill

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 次の瞬間、対空砲車両から各々三つの短距離ミサイルが打ち上がった。
 フレア射出。推力を調整しながら徐々に高度を下げつつ、左手に持った90mmマシンガンを連射。弾頭を撃ち抜き、爆炎で視界を封じる。
「HAL!」
 彼の欲しい動作を、HALが読み取る。視線入力で、敵をロック。トリガーに指を掛けた時、HALが機体をロールさせた。
 敵の対空砲が火を吹く。射線を回避するが、左肩に被弾。75mm徹甲弾はチョバムアーマーにめり込んで止まった。
 次の瞬間彼はミサイルを射出。六つのミサイルは扇状に広がりながら上空へ昇って行き、高度5000で各々12の子弾に分解。子弾全てはレーザーで誘導されながら飛翔し、敵機の真上に位置した瞬間炸裂。子弾全てはEFPだ。空中で炸裂した自己鍛造弾はペネトレーターを形成して敵車両へ鉄の雨を降らせる。
 空を覆う爆炎を突き抜ける一号機。機体はスラスターで減速し、大破した敵車両からの黒煙が立ち込めるビルの谷間にタッチダウン。
 その瞬間、ビルの影から敵の機動装甲“T-72”一機が飛び出し、一号機に向かって機関砲を構えた。敵は機関砲を発砲。
 彼はそれと同時にスラスターの断続噴射で射線を回避。
 彼はマシンガンを敵機へ向けて発砲。しかし敵機のT-72は、機動性は低くともそのパワーと装甲は折り紙付きの重量級。敵は90mm弾を全身に受け止めながら、構わずに機関砲を撃ってくる。機関砲を回避し、スラスターを全開で吹かして横道へ。敵の機関砲弾がビルを砕き、コンクリート片を撒き散らす。
「こちら四号機、交戦!」
「こちら二号機、高度を上げれば対空ミサイルの餌食だぞ」
「こちら一号機、まずは対空車両を排除…」
「敵機接近」
 スラスターを吹かして高速で機動する一号機を、今度は3機のガンシップが後ろから追い掛けてきた。
 ミサイルアラート。ガンシップからの対装甲ミサイル。チャフ散布。カウンタメジャー。
 次の瞬間彼は、空になったミサイルポッドをパージし、機体正面を真横に向けてから推力をカット。慣性に任せて横向きのまま、地面を刔りながら滑って行く。
 迫るミサイル。
 彼はサブマシンガンのマガジンを大腿部に装着された予備のマガジンと換えリロード。ミサイルをサブマシンガンで撃ち落とし、そして再びスラスターを全開で噴射。瞬間、慣性による進行方向に対して横向きの推進ベクトルを得た機体は、その軌道を直角に変え、横道へ吸い込まれる様に入ってゆく。
 爆炎を除けて高度を上げ、一号機を追って横道に入ったガンシップ。ガンシップのHUDに、ビルの谷間を後ろ向きに機動したままサブマシンガンの砲口を向ける一号機の姿が映った。
 地上で、サブマシンガンの閃光が散る。ガンシップに襲い掛かる90mm弾の嵐。徹甲弾はガンシップの装甲を容易に切り裂き、パイロットを機体ごと叩き潰す。
 墜落するガンシップ。次の瞬間、爆炎の光を正面に浴びる一号機の背後に、先ほどのT-72がビルを突き破って現れた。T-72は既に、左肩の175mmカノンを一号機に向かって構えている。
 彼はすかさず、一号機の右脚を一歩後ろに引き、機体を後方に倒してわざとバランスを崩す。敵が175mmカノンを発砲。彼は一号機の上半身を一気に捻り、スラスターの偏向と上半身の荷重移動により一瞬で右ターン。砲弾は一号機の背後を通り、虚しく空を切る。敵が右腕の機関砲を一号機へ向ける。それと同時に彼は左腕のオートグレネードガンを敵機へ発射。敵は回避に入るが右肩に命中。肩ごと右腕を吹き飛ばす。
 共に単分子ナイフを抜く二機。
 一閃。
 二機はナイフの刀身を鍔ぜり合わせたまま、ビルを突き破り、反対側の大通りに出た。
 擦れあう刀身から散る火花。その時、火花に照らし出された左肩に、骸骨の馬と髑髏の騎士のエンブレムが見えた。
 一瞬、彼の脳裏に蘇る記憶。あの、三ヶ月前の戦い。左腕と仲間の仇。
 次の瞬間、敵機のトップヘビーな大型ナイフに一号機のナイフが弾き飛ばされ、前蹴りがヒット。
 衝撃が機体を伝って彼の背骨を走り、脳が揺れる。
 突き飛ばされ、ビルにめり込む一号機。コックピットを睨み付ける敵機の175mmカノン砲口。
 その時、一発の徹甲弾が敵機の左側から飛来し、175mmカノンの薬室部を撃ち抜いた。
 爆発する175mmカノン。そして次々に降り注ぐ100mm徹甲弾。
 吠えるような発砲音と共に、スラスターを一杯に吹かした四号機が、敵から奪った100mm機関砲を敵機に連射しながら向かってくる。全身に徹甲弾を喰らう敵機。四号機は弾の切れた100mm機関砲を捨て、敵機にタックル。突き飛ばされて倒れる敵機に、更に右腕のマシンカノンを撃ち込んでとどめを刺す。
「無事か!」
 無線から、四号機パイロットの息の切れた声が聞こえて来た。
「二号機は…!?」
 彼は機体を立ち上がらせながら問う。
「二号機は…大破」
「何!?」
「敵はツァーリ・ヴォストーク隊だ!」
 彼は奥歯を噛み締め、右手の操縦桿をにぎりしめる。
「ああ。それより輸送機を護ろう。対空ミサイルさえ潰せば後は…」
 輸送機が、彼等の頭上を過ぎて行く。
「二手に分かれよう。輸送機進路上、射角範囲内の対空装備を集中攻撃。フィールドを突破後、ポイントで合流。幸運を!」
「了解、幸運を!」
 移動を始める彼等の機体。敬礼しながらY字路を右へ消えていく四号機がを見送った彼はスラスターを更に吹かし、加速。街路を高速で駆ける。
「警告、前方にMBT2」
 前方200に陸橋。その上に戦車が2両。1両が120mm砲を発砲。回避。立て続けに2両目も120mmを発砲。迫る徹甲弾を右腕の小型シールドで防御。目の前で散る爆炎を振り払い、陸橋の桁下へ。陸橋を潜りながら、右腕のマシンカノンと左手の90mmサブマシンガンを同時に発砲。橋脚を打ち砕いて、崩れる陸橋の瓦礫に戦車を埋める。
 高速で流れる背景に上書きされるロックオンゲージ。ゲージに合わせてトリガーを引く度に、爆炎が散る。
 レーダーに反応。ガンシップ4機。しかし、今は構っている暇は無い。彼がそう思った時だった。
 HALの超演算中枢が、ガンシップの制御システムへ侵入し、システムを奪取、同時に制御。レーダーに表示されるガンシップのIFFが味方へと変わり、一号機の頭上でウイングを形成。随伴し始める。
 HALによって侵入操作されるガンシップから送信されてくる、上空からの偵察情報。HALは無言のまま、モニターにガンシップからの情報を表示。敵を捕捉。装甲車両と戦車。
 ガンシップのFCSを機体へオーバーライド。ロックオン。
 彼はガンシップ4機を先行させ、その武装を開放。ミサイルとロケット弾が車両に着弾し、巨大な火柱をあげる。
 炎の中へ突入する一号機。攻撃を終えた4機のガンシップが、再び編隊を維持する。
 その時突然、コックピット内に警告音が鳴り響き、遥か前方のビルの合間から一発の対空ミサイルが打ち上がった。
「FIM-109…!! なぜ連中が西側の兵器を!?」