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VARIANTAS外伝 LastWill

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 上擦った声を上げる四号機パイロット。次の瞬間HALが、ガンシップの1機を編隊から離脱させ、輸送機の前へ向かわせた。ミサイルは、盾となったガンシップに命中。
 もう1機のガンシップを、ミサイルの発射点へ。ガンシップが、同じ発射点からの対空射撃で撃墜される。
 撃墜されたガンシップから送られた最後の映像。それは、ミサイルの発射筒を空へ構える機体と機関砲を持つ機体の2機の敵の姿だった。
「そこか!! こちら一号機、D23に対空装備!」
「こちら四号機! すまん、ここからでは間に合わない!」
「任せろ…次は撃たせない!」
 彼は、HALに指示を出す。
「HAL! 増加装甲をパージ! スラスター出力最大、何があっても推力を絞るな!」
「了解」
 全身の増加装甲をパージ。その瞬間、機体の背面に装着されたスラスターユニットが甲高い高周波音を発し始め、ノズルから青白い噴射炎が噴き出した。莫大な推力を発するスラスターユニットが、機体を凄まじいスピードで推し進めてゆく。
 あらゆる障害を、物理的に排除。進路を塞ぐビルはグレネード弾で吹き飛ばし、一直線に敵機のいるポイントへ。
 道中彼はサブマシンガンのマガジンを抜き、コッキングレバーを弾いて薬室から弾を抜き取ると外付けの延長バレルを取り付けてから、畳んであるストックを延ばし、赤いマーキングのマガジンを装着。初弾を装填する。
 見えた。空へ発射筒を構える敵機。捕捉、射程内!
 敵機が機関砲を発砲。ガンシップ一機が盾になる。爆ぜるガンシップ。一号機は爆炎を突き抜け、サブマシンガンの砲口を敵機へ向ける。
「砲を死なすホットロード弾だ…。受け取って貰おう!!」
 彼はサブマシンガンのストックをしっかりと肩に付け、トリガー。凄まじい反動を伴いながら連射される90mmホットロード弾は、強力な貫徹力をもったまま、新しい発射筒を構える敵機に集弾。徹甲弾を食らった敵機は、発射筒を持つ腕を粉々に撃ち砕かれ、ミサイルを地面に向かって発射。
 射出されたミサイルは敵機の足元でひしゃげて跳ね、二機の頭上で炸裂。爆風が二機にたたき付ける中、一号機は機関砲を持つ敵機へ素早く接近。
 左腕で機関砲を逸らすと右拳を敵機の顔面に叩き込んだ。
 マニュピレーターがグシャリとひしゃげ、めり込む。彼は、敵機の顔面に拳をめり込ませたままマシンカノンを零距離で発砲。コックピットを撃ち抜く。
 そしてサブマシンガンの砲口をもう一機へと向け、引き金を引いた。
 連射されるホットロード弾。その時、規格外の強装弾を撃っていたサブマシンガンが、遂に破断。しかしその頃には、敵機は屑鉄へと変わっていた。
「四号機、こちら一号機だ。敵をを廃除。ポイントへ向かう」
「…………」
「どうした、四号機!」
 四号機へ通信するが、応答無し。IFFに反応はあるが、通信にはやはり反応が無い。
 彼は機体を再び加速させ、ポイントへ向かう。
 しかし彼がそこで見たのは、生きている四号機ではなかった。
 四号機は、仰向けの敵の上に覆いかぶさっていた。コックピットには直径10cm以上の穴。それでも四号機は、敵機の胸部へナイフをしっかりと突き立てていた。
 その時、レーダーに無数の光点が浮き出し始めた。
 彼は空を見上げる。
 そこにあったのは、空を埋め尽くすガンシップの群れだった。
 圧倒的な戦力差。しかし彼は、死んでいった同胞と戦友の全ての魂の為に…戦う。
 彼は足元に落ちていた機関砲を左手で拾い上げ、右腕のマシンカノンと共に空に向けて撃った。
 機関砲の咆哮に重なる、彼の叫び声。
 その時だった。
「マスター」
 HALが、初めて彼を呼んだ。そして突然、機体のコントロールを奪い、コックピットを開いた。
「何をする!」
「私はここに残って、敵を迎撃。あなたを脱出させます」
 HALはそう言いながら、両手の火器を操作する。
「駄目だ、HAL!」
「マスター、消耗した今の彼方は戦闘の足手まといでしかない。私も脱出はします。ですから、急いで」
 HALが、機体の後ろに残った一機のガンシップを横付けし、キャノピーを開いた。
「さあ、早く」
 彼は奥歯を噛み締め、コックピットを出て横付けされたガンシップに向かう。パイロットを銃で脅して引きずり出し、シートに就く。
 そしてガンシップは、HALの操作で市街地を離れてゆく。
「あなたを護ることが私の存在する意義」
 HALが、一号機コックピットのコンソールに文字を写す。誰も見ることのない、HALの言葉。
「“死ぬ”のは怖いですが、あなたまで共に死ぬのはもっと怖い。あなたが傷つくことは、私にとって非常なストレスと感じるのです」
 ガンシップのロケット弾が、一号機の右腕を吹き飛ばす。
「…しかし、この行動さえも、数値による演算の結果であることが悲しい。でも、命の無い私が多くの命を救えるのなら、私はそれでいい」
 さらに頭、左腕さえも。
「私はそれを望む。これだけが、たった一つの冴えたやり方」
 次の瞬間、一号機のプラズマ融合炉が、HALの指示で暴走を始めた。
 機体は2秒で爆発し、5キロトン級限定核に匹敵する破壊力を発揮。光り輝くプラズマは敵ガンシップを巻き込み、都市を飲み込む。彼を乗せるガンシップは、都市から最大速力で離脱。
 背後には、燃える都市の光が煌めいていた。



4.
「怪我人なんだ、後にしてくれ」
 彼は、目の前に立つ、黒髪の女にそう言い放った。
 五日前の戦闘で、150人が死んだ。その中には、3機の360パイロットも含まれている。HAL搭載機で生き残ったのは、彼だけだ。医療センターのベッドの上に横たわる彼。失った左腕は再生され、傷一つ無い。その彼に、技術者が会っているのだ。
「私は技術的な意見など出せないぞ?」
 彼女は優しい表情で答えた。
「いえ、ただ…あの子達は、あなた達のお役に立てましたか?」
「あの子達?」
「HALの事です」
「あんたがHALの母親か?」
「違うと言えば嘘になります」
「………」
「紹介が遅れましたが、私は、エステル…」
「…レイ・クロフォード。知っている」
「…そうでしたか。あなたは?」
 彼は天井を見つめながら答えた。

「俺の、名前は…」





fin………?