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VARIANTAS ACT14 この娘凶暴につき

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 レイズの顔が青ざめる。
「核攻撃!?このままじゃ…!」
 彼がこう言っている間にも、ロンギマヌスは敵部隊の奥へ。
 レイズは、機体のスラスターを全力で噴射してロンギマヌスを追い掛け、外部スピーカーで声を掛け続けた。
「ダメだ、ビンセントさん!」
 さらに激しくなるロンギマヌスの戦闘機動。
 ビンセントは今の戦闘に全ての神経を集中させている。レイズの声には気付いていない。
「駄目だぁぁ!!」
 刹那、砲声のようなレイズの叫び声が、HMAの分厚い装甲を突き抜けてビンセントの耳に届いた。
「レイズ?」
 次の瞬間、遥か前方で光点が煌めいた。
「12時方向より高エネルギー反応!」
「くッ!」
 彼は右腕でコクピットを守り、咄嗟に回避する。
 命中する高出力ビーム。
 ビームは右肩を貫き、吹き飛ばす。
「ぐおッ!」
 ハンマーで横から殴られたかのような衝撃。
 コクピット周りの対ビームコーティングが、大出力のビームパルスによって瞬時のうちに蒸発する。
 パイロット・イクサミコ共に意識レベル低下。
 ほんの数秒のブラックアウト。
 それでも、コクピットを撃ち抜くには十分な時間。
 撃ち放たれたもう一発のビームは、正確にロンギマヌスのコクピットを狙った直撃弾だった。
「…さ…ビン…ト…」
 コクピットの中に、レイズの声が響いている。
 クレーター内で倒れているロンギマヌス。
 命中の瞬間、ロンギマヌスはレイズ機に弾き飛ばされ、ソルジャーの爆発で出来たクレーターの中に転げ落ちていた。
「ユリアさん!無線のチャンネル、キたっす!」
「よし!」
 ユリアは無線のスピーカーに耳を傾けた。
『う…』
『大丈夫ですか!?ビンセントさん!』
『どんだけ落ちてた?』
『ほんの数秒ですけど?』
『そうか。イオ、無事か?』
『ええ、何とか…』
『機体は?』
『右腕部全損、パイルバンカーを失いました』
『他は無事だな?』
『はい』
『よし、行くぞ』
『ちょっとビンセントさん!行くって何処へ!?』
『決まってるだろ?奴をぶっ飛ばしに行く!』
『何を言っているんですか!見たでしょ!?敵の新型は“狙撃兵”!しかもこちらのセンサー範囲外から評定射撃無しで当ててきた!今出れば接近される前に撃たれます!』
『馬鹿野郎!スナイパーが怖くて傭兵なんかやってられるか!』
『馬鹿はあなたです!先ほど本部から退避命令が出されました!間もなくここに、本部からの核攻撃が開始されます!早くしないとヴァリアント達もろとも巻き込まれますよ!』
『逃げたきゃお前は逃げろ!俺は行く!』
『ビンセントさん!あなたはユリアさんを本当に一人ぼっちにしてしまう気ですか!』
『な…に?』
『帰る所があるなら、待っている人が必ずいます!だから…何があっても必ず帰るんです!』
 沈黙。
『帰って仲直りするんです。待ってますよ、きっと…』
 無線の前で、ユリアは涙を流していた。
 自分が待っている人間が、今必死に戦っている。
 それなのに自分は何も出来ない…
 自分は今何を…
『レイズ!』
『はい?』
『生きて帰るぞ!』
『はい!』
 無線の向こうで、お互いの機体を見合うレイズとビンセント。
 ユリアは閉じていた目をゆっくりと開け、静かに呟いた。
「行こう、ハリー…」
「へ?」
「兄貴の所へ!」
 ハリーは驚きで緩んだ口元を引き締め、強く頷いた。
 ユリアは輸送機のカーゴに積み込んだ旧ロンギマヌスに乗り込み、大きく息を吸う。
「兄貴の匂いがする…」
 機体を起動。
「ユリアさん!準備はいいっすか?」
「いつでもいいぜ!ハリー!」
 輸送機が滑走路の真ん中へ進入する。
「ちょっと…?」
 一刃が無線でユリアを怒鳴り付けた。
「何やっているのですか! ユリアさん! 一体何処に行くんですか!」
 ユリアは答えた。
「もう待っているだけじゃ嫌だ。今度はこっちから出向いてやるんだ!」
「出向くってユリアさんあなた…」
「なぁ一刃…」
「はい?」
「悪かったな、いろいろ…」
「え…?」
「ごめんな…」
「発ッ進するっす!」
 彼女のその言葉を残して、輸送機は数10mの滑走の後に大空へ飛び立って行った。
 それを見送る一刃。
 彼は奥歯を噛み締める。
「若様…」
「いいんだ!ほって置けば!」
 そう言いながらも、彼は何度も空を見上げていた。



************





 ホーミングレーザーの光条が空を切り裂き、炸裂したミサイルの爆炎が空気を焦がす。
 ディカイオスとネクロフィリアによる、攻撃の応報。
 双方の機動力を充分に用いた高速戦闘が、先ほどから続いている。
 ディカイオスのホーミングレーザーを軽やかに回避するネクロフィリア。
 リベカが、ネクロフィリアの全身からミサイルを放つ。
「ミサイル接近、数40」
 グラムは左腕のフォトンマシンガンでミサイルを迎撃。領域制圧砲を発射。
 対するリベカは、自分に迫る五本の高出力ビームに向かって、ポジトロンブラスターを発射。
 ぶつかり合い融合する二つの巨大なエネルギーは、互いに消滅しあい、太陽のような火球を作り出す。
「前より出来るようになったな! リベカ!」
「貴様に褒められても…! べ、別に嬉しくなんかないんだからな!!」
 ディカイオスに切り掛かかるリベカ。
 グラムはそれを機体の左腕で受け止め、プレッシャーカノンの砲口をネクロフィリアの腹に突き付けた。
 撃ち放たれるプレッシャーカノン。
 リベカは素早く、歪曲空間を展開し、プレッシャーカノンの放つ歪曲した重力波フィールドを中和。
 それでもその巨大な衝撃は、ネクロフィリアの巨体を大きく弾き飛ばした。
 互いに睨み合うディカイオスとネクロフィリア。
 その時、ディカイオスの遥か後方で例の新型がゲートアウトした。
「なるほど…目的は最初から“これ”か…。実験部隊にでもとばされましたか?機械のお姫様」
「黙りなさい! 黙りなさい! お黙りなさいッ!! お父様の命令なら私は何処にでも行き、何にでもなる! そうだ、今お前を倒せばお父様にきっと頭を撫でてもらえる…! だがその前に…狙撃兵に狙われて鼠のようにはいつくばっているお前の部下を皆殺しにしてやる!」
「皆殺し? それはいい。とんだ暴れん坊なお姫様だ」
「何がおかしい!」
「お前に一つ教えてやる。彼らを殺すのは至難の技だぞ?」
「ふん! たいした信頼関係だ!」
「信頼関係? 違うな…。彼らは“私の部下”だぞ? ただ簡単に死んだりするものか。いいかリベカ、よく聞け。我々を、我々の力を、人類を嘗めるな」
「ほざけ!」
 リベカは再び、ディカイオスへ向かって行った。



************




「生きて帰るぞ!」
「はい!」
 レイズとビンセントはお互いの機体を見合った。
「俺達は奴のキルゾーンに入っちまってる! 奴はHMAのセンサー有効半径外! 捕捉されたら最期、確実に殺られる!」
「そのまえに奴のセンサー有効範囲外…出来る限りの遠くへ!何発避けられるか…」
「考えるな、レイズ! 頭で考えれば動きが鈍るぞ!」
「ええ…そうですね!」
「3カウントで出る!」
「はい!」