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VARIANTAS ACT14 この娘凶暴につき

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Captur 5



[同時刻、サンヘドリン本部中央発令所]


「ディカイオス、大型ヴァリアントと交戦!」
「全戦線は未だに現状を保っています!」
「現在、爆装した空軍機が戦線へ急行中。到着まで1200秒!」
 ガルスが髭を撫でる。
「シェーファーフントはどうした?」
「出撃した二機とも、現状を維持…いえ…! 前言撤回! シェーファー02、敵軍勢下へ急速接近! 接敵まで80!」
「直ぐに引き返させろ!」
「02、無線不通!」
「イクサミコ同士の双方向回線も不通! 完全なスタンドアローンです!」
 突然、発令室に警告音が鳴り響いた。
「どうした?」
「敵勢力後方最奥部に小質量ゲートの出現を確認!」
「質量物のゲートアウトを確認! 質量推定…ファットネスクラス!」
「目標から高エネルギー反応検知!大出力ビーム兵器の可能性大!」
「データベースに一致なし! 新型ヴァリアントです!」
「司令、ご指示を!」
 大きく息を吸うガルス。
「司令…」
「前回と同じにはしたくない」
 ガルスの顔を見つめるレイラ。
 彼は一呼吸置いてから立ち上がり、決断を下した。
「現時点から現状の作戦を全て破棄! 全部隊撤収と共に、局地核攻撃を行う!」




************




「兄貴…?」
 ユリアは輸送機の中で、誰かに呼ばれたような感覚に捕われていた。
「なあ、ハリー。まだ飛べないのかよ…」
 ユリアがぼやく。
 未だ離陸許可の下りない滑走路で、機体は足止めを食らっている。
「いやそれがっすね、今度はハンガーに戻れって言うんすよ…」
 ユリアがハリーの胸倉を掴んだ。
「何でよ!」
「な、なんか優先的に飛ばす機体があるみたいで…!く、苦しっ!」
 滑走路後方のハンガーゲートが開き、水蘭が路上に出る。
「珍しいなぁ…」
 開口一番、一刃がそう呟いた。
「え?」
「あそこに見える輸送機、DA社の超音速輸送機だよ。大出力可変サイクルエンジンとベクターノズルで大型輸送機ながら超音速巡航ができるんだ」
「あのう、若様?その輸送機から通信が入っています」
「輸送機から?」
 回線接続。
「こちら水蘭、応答…」
「ふざけんじゃないよー!!」
 水蘭のコクピット内に、ユリアの怒号が響く。
「ユ、ユリアさん!?」
「優先だか何だか知らないけどこっちはもう…!って一刃!?」
「この輸送機ってユリアさんのだったんですか?」
「そうだよ!なんか文句ある?」
「いえ、ただ、超音速輸送機だなんて、ビンセントさんよっぽどユリアさんに早く帰って欲しいんですね」
 ユリアの表情が今にも崩れてしまいそうになった。
「そうだよね…そうかもしれない…」
「ユリアさん?」
 その時、水蘭に司令部からの指令が入る。
『本部より全部隊へ。敵勢力下に新型ヴァリアントを確認。全ての部隊は現状の作戦を全て破棄。全部隊撤収と共に、局地核攻撃を行う』
「核攻撃!?それじゃあ前線は今頃…」
「おい! 核攻撃ってどういう事だ!」
「ピンチ…みたいですね…」
「みたいです…じゃねぇだろうが! お前は何で出撃しねぇんだ!」
「僕には待機命令が…」
「命令が今何だって言うんだ!」
「でも大佐は…!」
「あんた、少しは豪気な奴だと思ってたけど違ったみたいだね…。あんたとんだ腰抜けだよ!」
 ユリアは水蘭との通信を一方的に切断。
 ハリーに叫ぶ。
「ハリー! 前線の様子が知りたい! 無線のチャンネルを探せ!」
「り、了解っす!」
 ユリアは心の中で叫んだ。
「(失ってたまるか!)」




************




「ビンセントさん!」
 レイズの声の届かぬまま、ビンセントの駆るロンギマヌスはソルジャー達の前面へ飛び出していった。
「来い、この野郎!」
 ビンセントの声に呼応するかのように、ソルジャー達がビームカノンを撃ってくる。
 彼は左手に持ったオートランチャーを3連射しながら迫るビームを寸で回避。
 発射した3発の成形炸薬弾が炸裂し、ソルジャーの胴を打ち砕いて爆発させる。
「タンゴだ、踊ってやるぜ!」
 ロンギマヌスは、巻き上がる砂埃と爆炎を突き破り一機のソルジャーへ接近。
 振り抜かれる超振動ナックルを素早く回避し、ランチャーを叩き込む。
 炸裂する炸薬弾。
 崩れ落ちていくソルジャーを踏み台にし、前方の一機へ向かって大きくジャンプするロンギマヌスは、ソルジャーから撃ち放たれるビームカノンが装甲表面を掠めるなか、スラスターで大きく加速し、そのソルジャーの頭を蹴り飛ばしてその反動で鋭角にターン。
 炸薬弾を横から撃ち込んで着地する。
 その瞬間、ソルジャー達が一斉にビームカノンを発砲。
 しかし彼はそれを物ともせず、弾幕の中へ向かっていった。
 迫るビームの直撃をギリギリで回避しながら、針の穴のような弾幕の隙間を縫って、ソルジャーへ接近していく。
 まるで、ロンギマヌスの姿を忌み嫌うかのようにビームカノンを連射するソルジャーにビンセントは、唸りを上げる右腕のパイルバンカーを振り上げ、一機のソルジャーの腹へ突き立てた。
 打ち出されるパイル。
 コアを避けて撃ちこまれた巨大な杭が、ソルジャーの胴体を突き抜ける。
「しばらく付き合ってもらうぜ、ベイビー!」
 パイルでソルジャーを貫いたままスラスターを一杯に吹かし、再び前進を始めるロンギマヌス。
 他のソルジャー達が浴びせるビームの雨が、機体の楯となっている貫かれたソルジャーの身体を次々に削り取っていくなか、彼は“楯”の横から左腕を延ばし、残り2発の形成炸薬弾を全て撃った。
「オートランチャー、残弾0です」
 弾切れになったランチャーを捨て、今度はマシンカノンを連射しながら前進するロンギマヌスは、ビームで穴だらけになった楯にしているソルジャーからパイルを引き抜いた。
 次の瞬間、楯代わりにしていたソルジャーが数発のビームによって貫かれ、爆ぜ、砕け散る。
 ビンセントは瞬時のうちにロンギマヌスのスラスターを吹かして高く飛び上がり、マシンカノンを連射。
 弾幕を張りながら急降下するロンギマヌスに、ビームが掠める。
「南無三!」
 地表ぎりぎりでロンギマヌスの左腕を振り上げビンセント。
 彼が振り上げる左腕のマシンカノンに装着された伸縮式のソニッククローが伸び、着地と同時にソルジャーの胸を切り裂いた。
「次ッ!」
 まるで餓えた獣のように戦い続けるビンセント。
 その姿を、レイズは冷や汗をかきながら見ていた。
「あんな闘い方無茶だ!」
 レイズ機がロンギマヌスの後方から高速でやってくる。
 突然彼は、モニターに映るソルジャーの群れの奥に違和感を感じ取った。
「サラ、モニター中央最大ズームで!早く!」
「了解!」
 モニターに映る、正体不明の物体。
「新型…!?」
 それを見た彼の背筋に悪寒が走る。
「ビンセントさん! 応答してください! ソルジャーの群れの奥に“何か”居ます! ビンセントさん! …ダメだ! ビンセントさん無線切ってる!」
「レイズ!」
 本部から、ルート権限を用いての緊急発令。
『本部より全部隊へ。敵勢力下に新型ヴァリアントを確認。全ての部隊は現状の作戦を全て破棄。全部隊撤収と共に、局地核攻撃を行う』