君といた時間
先週と同じ埃っぽいソファーに身を沈めて少し目をつむる。このアニメはサークルで二番目に造ったアニメーションで色々と思い入れがあるものだった。処女作は、自分で言いたくはないけど、かろうじて見れる程度の酷い出来だった。だからこの2本目はいわゆるリベンジ的な意味も込めて、サークルの先輩や友達を巻き込み試行錯誤しながら何徹もして仕上げた作品なのだ。それでも出来はまあまあといった所かもしれないけど、仕上がった時に周りの友人や先輩が一緒になって喜んで褒めてくれたのが、照れくさくもあったけど素直に嬉しかった。編集や音響も終えて仕上がった時の充足感と、上映でスクリーンで観れた時の興奮は今でも忘れられない。
その後、もちろんイラストや絵も描いたし、友人のショートムービーにも参加してみたりしてこんな僕でもそれなりに作品数は増えた。だけど、それでもこのアニメが今でも僕の中で一番の作品だった。
目を開けて少しため息を吐いてから、ケータイを見た。時刻はちょうど授業の終わりから5分程過ぎているので、そろそろ来る頃だろう。そういえば彼の連絡先を訊いていないな、ふとそう思ったときに怜二郎が現れた。
「ごめん、遅くなった。」
「いや、授業お疲れさま。悪いんですけど、これ観るの映像部の部室でもいいですか?」
アニメの焼いてあるディスクを見せながら伝えると、彼と連れ立って部室へと向かった。お疲れさまでーす、と言いながら少しぎぃと音のするドアを開けると、中にいたわりと仲のいい先輩2人が目敏く怜二郎を見つけて「入部希望者?」などと色めき立つ。
「圭クーン、イケメンさんと同伴ですかー?」
いつも僕をからかってくる方の高村さんが僕と怜二郎を見比べながら言い放った冗談は、僕をテンパらせるのには十分過ぎる一発だった。
「!ちょっと!?何言ってるんですか!!」
「きゃーこっわー!あ、私達ちょうどこれから用事あるからついでに留守番しといてくれる?ごゆっくりー」
高村さん!と少し声を荒げた僕に少しも動じず先輩達はケラケラと笑いながら、これだから圭君はカワイイんだよなー、なんて言い捨てて部室を後にした。ドアが閉まったと同時に2人に流れたこの気まずい空気をどうしてくれるって言うんだ。
「と、とりあえず、こっちのパソコンで観ましょうか。」