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君といた時間

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それから僕は嘘みたいに普通に学生生活を送った。もっと女々しく落ち込んで何も手につかなくなるかと自分で思ったけど、テストや課題やバイトを忙しくこなして日々を淡々と過ごしていた。変わった事と言えば少しだけ煙草を嗜むようになったくらいだった。時折どうしようもない寂しさや虚しさに襲われた時にあの苦みを味わうことが、僕を現実に引き止めてくれているようだった。それでも友人には似合わないと散々に批判されたので、あまり小野寺さん以外の人前では吸えなかったけど。

そうして僕は無事に3年になり、後期から始まろうとする就職活動に漠然とした不安を抱えながらもそれなりの日々を送っていた。
HPでチェックするのは、総務・事務関係の職種だ。さらに僕は忙しいのを言い訳にして課題以外の物作りからは遠退いていた。そんな中、前期の終わりに久しぶりに呼び出され、しぶしぶ顔を出した映像研究部ではアニメ制作班の中ではある噂でもちきりのようだった。
「圭君、動画サイトって見る?」
なんでも、ものすごく上手いオリジナルの手書きアニメーションが何週にも渡ってその動画サイトのランキングのトップにいて、その動画は死んだ恋人宛のラブレターなんだとか、ウチの大学の生徒が造ったんだとか、とにかく様々な尾ひれをつけたいろんな意味で話題のアニメーション動画があるらしい。
その場ではなんとなく噂話をするみんなのテンションについていけなくって、適当に相づちを打ちながらその話題からは離れた。
それからまたしばらくしたある日偶然高村さんに会い、彼女もその動画を知っているという話になり、彼女もその動画について随分熱っぽく語ってくれた。お互い忙しかったのでその後少し雑談をしただけで別れたのだけど、僕はなんだか無性にその動画が気になって結局家のパソコンで検索にかけることにした。


タイトルは『Our Happy Thurs.』

直訳すると私たちの幸せな木曜日、って感じか。
動画は少年とも少女とも取れない二人が繰り広げる台詞の無いおとぎ話のような悲恋らしい。
このタイトルをはじめ聞かされた時は、正直心臓が跳ねた。だって木曜は、木曜の放課後は――いや、もう木曜日はただの木曜日なんだ。
作品名:君といた時間 作家名:ソウスケ