君といた時間
そんなもやもやした想いを押し込め、Now Loading…の文字をしばらく見つめて落ち着こうとした。しかしそんな意思とは裏腹に、だんだん動悸がしてくる。高鳴る心臓を押さえながら、おそるおそる再生ボタンをクリックした。
「 。」
「…台詞が無いだなんて、嘘じゃないか。」
最後去って行く方がたったひとこと呟く「好きだよ」
そのたったひとことが僕の目から涙を溢れさせるには十分だった。
動画の噂話をしていた連中に毒づきながらも、こみ上げる涙を止めることはかなわなかった。
しかし疑惑が確信に変わったのは、本当に最後のメッセージ。
「僕はこれからも君のためにつくり続けます。 From R , To K」
「…ありがとう、怜二郎。」
しばらくして少し涙がおさまりはじめて一人モニターに向かって呟いたあと、僕はクロッキー帳と鉛筆を取り出す。
まだ不安はたくさんある。僕には作り続ける才能があるのか、残せるものが作れるのか。
だけど僕には、僕らには、これしか無いんだった。そこを疑ってはどう足掻いても一歩も進めないんだ。
これからも揺れる時はくるんだろう。けど、この手を動かし続けることにきっと意味がある。
明日は映像研究部に行って、ポートフォリオを作り始めよう。ああ、忙しくなる。
そうして、僕は煙草を全部水に浸けた。
(Fin.)