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君といた時間

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夏休みが明けて暫く経っても怜二郎は木曜の放課後に姿を見せる事はなかった。まるで夏と共に怜二郎は僕の前から去ってしまったのだ。
それから僕は木曜だけでなく放課後はほぼ毎日のようにサークル棟ギャラリー前のソファーで怜二郎を待った。忙しいんだろうか、それとも身体を壊したんだろうか。今更になって怜二郎の連絡先を知らない事を僕は激しく後悔した。彼はケータイを持っていなかったし、今まではそれでも構わなかったんだ。怜二郎と一緒にいはじめて、僕自身もケータイを弄ぶ事が少なくなっていた。少なくとも今までの僕らの間にはケータイや会う約束なんて必要なかったのだ。この木曜日の放課後の数時間が僕と怜二郎の絆になっていて、一緒にいられるだけで幸せだった。いや、本当はもっと一緒にいたかったのかもしれないけれど、あれ以上を望んでしまうと僕は自分をコントロールできただろうか、疑問が生まれる。きっと無意識のうちに抑え込んでいたのだろう、そしてそれが一番良かったんだ。怜二郎は謝らないでいいと言ってくれたけど、僕はあの夏の出来事をいつしか後悔し始めていた。

それから季節が過ぎて朝晩の風は日に日に冷たさを増して体育館脇の桜並木がすっかり紅葉しきった頃、僕はだんだんサークル棟にすら寄り付かなくなってしまっていた。そんな僕を心配して高村さんはよくサークルの様子なんかをメールしてくれていたけど、もう僕は何もする気にならなかった。いつしか怜二郎への想いはただ重い枷のような罪悪感になって心を蝕み、耐えきれなくなり、僕は怜二郎を探すのをやめてしまった。

そうしているうちに後期も終わりを迎えようとしていた頃、怜二郎と一緒にいた助手さん――小野寺さんを図書館で見かけた。
思わずここが図書館だという事も忘れて、僕は小野寺さんの名前を呼んで彼を引き止めてしまった。周囲のざわめきや突き刺さる視線が痛い上に、小野寺さんも当然大層驚いて僕の事をいぶかしんでいたけど、そんな事はおかまいなしに話しかけてしまった。正直自分にまだこんな行動力があったなんて信じられなかったし、今更わざわざ小野寺さんを掴まえて何を聞き出すかなんて全く考えちゃいなかったけど、それでも彼を引き止めずにはいられなかった。
作品名:君といた時間 作家名:ソウスケ