君といた時間
僕は「結構すごいって何だよ」なんて少し憎まれ口をたたきつつも、内心は怜二郎がまだあの作品を好きでいてくれた事が嬉しくてたまらなかった。
「いつか圭の為の作品、造ってみたいな。」
独り言のように呟いた怜二郎の言葉に、僕は思わず驚きの声を上げてしまったがそんなことは気にも留めないかのように怜二郎はそのまま続けた。
「俺、造るのだけはずっとやめないよ。圭の作品も好きだから、圭もこの先ずっと造っていて欲しい。俺達そうしていたらたぶん、一緒にいられるような気がするから。」
怜二郎が何を言っているのかよく解らずに、僕は思わず惚けてしまった。彼の言動が少し斜め上なのは既に承知だけど、この台詞はまったく理解に苦しんだ。しかし彼の言葉と瞳があまりに真摯で胸を突かれたようになり、返そうとした言葉が全て喉元まできてはそのまま消えていってしまう。結局僕は何も言い出せないまま怜二郎の手を握ることが精一杯で、その手もしばらくするとおそらくギャラリーのオーナーらしき人が帰って来た気配がしたと共に離してしまった。
それが、僕と怜二郎の最後の時間だったなんて今でも信じたくないよ。