侭歩け暗野の青
5
黄色の雪洞の下にはずっと水路が続いていて、僕らはその脇を歩いていた。たまに同じ色の提燈を手に提げた子供達らしい影や、連れ立ってゆっくりと歩く大人のような影と擦れ違う。皆広場へ行くようだった。
「サーカスが、来ているのかしら」
「どうしてそう思うの」
「音楽が似ているから。サイリアンタはどこまで一緒に行く?」
「もうそこよ」
僕は辛いような気持ちになったので、まばらになってきた家々のその景色を惜しんでいるような風で喋った。
「僕はここに住んでもいいなあ。ねえ月が出るまで居ても構わないだろうか」
「きみがそうしたいなら誰も嫌とは言わないだろう。でもいいのかい」
スニッダウォチがすっとにやにやを引込めてそう言うのを僕は見た。彼の白い上着の裾がぼんやりと揺れている。僕は馬鹿なことを言ってしまったような気がして、そしてとても恐ろしい気持ちになった。涙が滲んできて膝ががたがた震えた。そうだ、お母さんのところに帰らなくっちゃ。黙って震えている僕をサイリアンタが微笑ったまま見ている。その首筋がこんなに暗いのに浮かび上がって見える。行こうか、と口の中で呟くと、二人には聞こえたようだった。