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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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インビンシブル<Invincible.#1-1(2)>

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サゴン海峡 
-ウォルターナー諸島-(グアマ天文台標準時0855)
<森林地帯> 
 
 レオとギアは、島に輸送機を到着させたあと森へ入り、
墜落したARの捜索を行っていた。
生い茂った木々と藪林を掻き分け、行く手を塞ぐ樹木の蔦を鉈でなぎ払い、
亜熱帯の森林をひた突き進む。

 「なぁ、レオ」
鉈で蔦を切り払いつつ、ギアが口を開いた。
「なに、じいちゃん。」
「お前、アルヴェードに乗りたくないか?」
 それは、レオにとって忘却したい”恥”の部分であり、
心の底にしまいこんだ”澱”であった。
AAパイロットというのは、自分にとっての夢であり、
憧れであり、天から授かった使命であった。
それが現実のものになるのなら、ほかのものなど犠牲にしても
良いと言うほどで、どんな娯楽や悦楽にも勝る、ずっとずっと
魅力的な輝きを放っているものだった。
それでも、今の自分にはもう縁が切れてしまったものだと、
レオは諦観していた。
「そりゃ、出来るならね。でも、無理だよ。
あの時以来、空が読めないんだし」

 レオはある時の事故以来、空を飛ぶことに対してストレスを
感じるようになってしまった。
トラウマ<PTSD>と言うには大げさだが、AAに乗ると
体が震え出し、深層心理域では拒絶反応を示す。
そうした人間の周囲にはAAの空中機動に必要な
反斥輝雪粒子(リフレクションスノー)が集まってこないらしく、
AAの推進力の要であるリフレクションホイールが
上手く機能しなくなるという。
こういう状態のことを指して、
AA乗り達は『空が読めない』と比喩していた。

 今ではAAをはじめ、リフレクションホイールを
推進機関とする乗り物でまともに空を飛ぶことさえままならない。
空を飛ぶには、他者の補助が必要であるほどだ。

「で、女々しくもパイロットに未練を残し、
整備士になったってわけじゃな」
 レオは、パイロットにならなかった代替行為として
技術士官になった。
その理由は、”パイロットの次にAAの近くにいられる”
それに尽きたからだ。
ギアが言うとおりそれは未練がましく女々しいことで、
レオはそれを恥だとも思っていた。

 自身の図星の部分を突かれて、レオは思わずぶっきらぼうに
言い返してしまった。
「いいじゃないか別にさ。いいから黙って歩きなよ、じいちゃん」
「へいへい」
そこでいったん口を止めたギアだったが、一泊の間を置いてからまた尋ねてきた。
「…でも、パイロット。諦めてはいないんだろう」
一瞬の間と、沈黙。
「…どうだろう、わからないな。でも、たぶん…」
後悔と未練。後悔と憧憬。
「理由は欲しいかな」