温泉に行こう!
それを聞いて、寺島は複雑な気分になる。
まわりが久坂に対してする期待は大きい。
大きすぎるほどだ。
久坂が他の者より才に恵まれているからしかたないのかもしれないが、久坂にしてもひとりの人にしかすぎない。
人以上のものではないのだ。
それなのに、人ひとりの肩に乗せるには大きすぎるほどの期待をされているように感じる。
「まあ、得することが多いから、いいんだけどさ〜」
あっさりと久坂は気分を切り替える。
そして、布団へと倒れた。
気持ちよさそうに眠っている。
子供のような寝顔だ。
寺島はそれを眺めつつ、明日のことを考える。
しかし。
予定を立てたところで、そのとおりには行かないだろう。
今日のように。
そう思うと、なんだかおかしくて、つい、ひとり笑った。