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温泉に行こう!

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「久坂さん」
市之助が呼びかけた。
「話をもどします」
その童顔からは少しあせりが感じられる。
市之助も嘉二郎の表現のマズさに気づいていて、話を変えたいようだ。
そして。
「さっきカジも言いましたが、みんな、久坂さんが帰ってくるのを待っています」
緊張した面持ちで説得を始める。
だが、直後、市之助は、あ、となにかを思い出したような表情になった。
その顔が寺島に向けられる。
「もちろん、寺島のこともだよ!」
拳を握り、力強く告げた。
気遣ってくれているらしい。
寺島は軽く手を振ってみせた。
自分のことはいいから、話を続けてくれ。
そんな思いをこめた。
わかった、というように市之助はうなずき、それから久坂のほうをふたたび向く。
「久坂さん。頼りにするのは申し訳ないことかもしれませんが、それでも、やっぱり、久坂さんにはいてほしいんです。久坂さんがいるだけで、みんなの心の支えになります」
真摯な眼で久坂を見ている。
嘉二郎も、じっと久坂を見ている。
そんなふたりをまえにして、久坂はふっと表情をゆるめた。
「しょうがない。もうしばらく遊んでいたかったけど、帰ることにするよ」
そう告げ、その整った顔にやわらかな笑みを浮かべた。

夜。
寺島は町の有力者のひとりの屋敷にいた。
もちろん寺島ひとりではない。
久坂もいる。
それから、嘉二郎と市之助もいる。
「すごく豪勢だね……!」
嘉二郎が正座しているまえにある膳を見て、言った。
その眼はキラキラと輝いている。
「……寺島。もしかして、よくこんなふうに宴会に招かれてるの?」
市之助が聞いてきた。
「ああ」
だから、寺島はうなずく。
作品名:温泉に行こう! 作家名:hujio