RUN ~The 1st contact~
青年は静かに笑うと、ドアの方へと歩いていった。
「待って。今、なんて言ったの?」
「質問なら後で答える」
「わかったわ……でも、その前に教えて。あなたの名前は? 得体の知れないままじゃ、あなたを呼ぶことも出来ない」
背を向けた青年の顔は見えないが、一瞬、辺りに張りつめた空気が漂う。
「……ラン、とでも呼んでくれ」
ランと名乗った青年は、そのままドアを開けた。圭子は恐ろしいまでのその名に目を見開きながらも、その男についていった。
コードネーム・ラン……その名を聞いて、知らない国際犯罪組織はいない。
その名の起源を辿ると、実に百五十年以上前に遡る。だが裏社会に生きる人間というだけで、その詳細はほとんど公になっていない。
しかし、その名は消えることなく、常に裏社会のトップに君臨してきた。作られたまでの噂では、この世のものとは思えぬ強さと、美貌を持ち合わせた男という。
だが、それが嘘なのか本当なのか、またそれ以外の詳細は、何一つわかっていない。
作品名:RUN ~The 1st contact~ 作家名:あいる.華音