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恋するワルキューレ 第二部

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「まあな。私も撮影の時は、ウエストの所はよく詰めるんよ。わたし位の身長だと、男モノを着ることもあるしな。走っている時はええけど、折角タッキーに写真を撮ってもらうんや。スタイルは良く見せたいやろ?」
「もちろんよ! わたし頑張るんだから!」
「ハハハ、その意気や!」

* * *

「美穂姉え、やっぱりちょっと待ってったらあ!」
「もう、さっきまでの勢いはどうしたんや?」
美穂は恥ずかしがっている裕美をタッキーの前に引っ張りだした。
「ほら、タッキー! 見てみい! 裕美もええ感じやろ?」
おおぉ!
その姿を見て、“彼”も思わず目を見張る。
赤い水玉模様のジャージにミニスカート姿はハワイのセンチュリーライドと同じだが、ソックスも赤の水玉模様で、ル・コックの白いテニスシューズに赤い紐でカラーリングを脚元まで統一してある。
本来、ツール・ド・フランスで最高のクライマーを讃える王冠となるべきジャージであるが、裕美がそのジャージを身に纏うと、それが信じられない位に女の子らしいデザインのジャージに変わるのだから不思議としか言いようがない。
「裕美さん、イケてますよ。プロのモデルに負けてません」
「本当? わたし変じゃない?」
「変なところなんてありませんよ。水玉ジャージが凄く似合ってます。これなら良い写真が撮れますよ」
「でも、わたし自信無くて……」
「そんなことありませんよ。自信を持って本当に胸を張る位でないと良い写真が撮れませんからね」
「胸を張るなんて、そんな恥ずかしくて……」
「裕美さん、スタイルだって十分ですよ」
「そんな……」
裕美もカメラを前に完全に腰が引けてしまい、撮影場所に立つことも出来ない。
撮影場所には、『デローサ』がセットされ、照明もライトアップされ、後は裕美がその場所に立つだけなのだ。
いつまでたっても、カメラの前に立とうとしない裕美に流石に“彼”も困ってしまう。初めて“撮られる”立場になる女の子だけに仕方のないことではあるが、あまり悠長なことも言ってられない。
仕方ないと思いつつも、“彼”はカメラを裕美に向け、いきなりシャッターを切った。
カシャ! カシャ!
「きゃっ、店長さん。今、もしかして撮ったの?」
「ハハハハ。何度か撮っている内に、すぐに慣れますよ。とりあえずリラックスしたところを撮ってみましょうか?」
「えっ、でもわたし心の準備も出来てないのに、変な顔じゃなかった?」
「全然、変じゃありませんよ。それじゃ、行きますよ!」
カシャ! カシャ! カシャ!
「キャー! ダメ、店長さん!」
裕美はつい両手で顔を隠してしまう。
「あっと、裕美さん! 流石に顔を隠すのはダメですよ」
彼も、仕方ないなあ、とばかりにカメラを降ろさざるを得ない。
「何や、裕美も意外と度胸がないなあ」
美穂は、ホンマしゃあないなあと肩を竦めてながら、こっそりと裕美の後ろに回り込み――、その胸やウェストを触り始めた。
「ほらほら、どうや! 裕美!?」
「きゃああぁあー! 美穂姉え、何するの! 止めて―!」
裕美が身悶えながら美穂の手を振りほどこうとするが、後ろから羽交い締めにされているので逃げることも出来ない。
さらに美穂は、裕美の肩越しに首を絡め、その頬で裕美の髪やうなじを撫で始める。
「うーん、裕美。なかなか良い匂いがするやん。あんた、なかなかエエなあぁ」
「ちょっと、待ってったら! 美穂姉え!」
美穂はその手で裕美の胸やウェストを更に触る。
「ほらあ、あんたも子供やないんやろ? そんないつまで恥ずかしがっとんのや?」
裕美は、その恥ずかしくもくすぐったい感触に身をよじらせる。
「そんなあぁ! わたし、まだそんなことされたことないのにいぃ!」
「ほおぉ! そんならわたしが……」
その瞬間――。
カシャ! パシャ! カシャ!
きゃっ!
シャッター音とフラッシュの閃光に裕美も驚き、動きが止まってしまった。
「えっ、もしかして、店長さん今の撮っちゃったの?」
「アハハハ……。なかなか絵になるシーンだったので、つい撮っちゃいました。裕美さん色っぽかったですよ」
“彼”もも笑いながら誤魔化そうとするが、ご丁寧にフラッシュまで炊いていたのだ。“つい”指が動いたというものでは決してないだろう。
「ちょっと、店長さん! それダメェェーー! 削除して! その写真を消してぇー!」
「ハハハ、良いじゃないですか。可愛く撮れてますよ。僕も記念に一枚貰って良いですか?」
「イヤ―! 絶対ダメェェーー!」
裕美は“彼”に飛び付き、カメラを奪い取ると、そのモニターにはしっかりと、美穂に身体を絡められながら、恥じらう裕美の姿が写っていた。
きゃぁぁーー! 
声にならない悲鳴を上げ、慌ててその画像を削除しようとするが、裕美が使ったこともない一眼レフの大型カメラだ。操作方法など分かるはずもない。
「ああぁん! 店長さん、お願い! さっきの写真を消してぇーー!」
「そんな、折角、良い写真が撮れたんですから、勿体ないですよ。後で良い記念になりますよ」
“彼”は爽やかに笑いながら、そう答えるが、裕美は半分泣きそうになりながら懇願する。
「こんなの恥ずかしくてダメよおぉ!」
「大丈夫です。他の人には見せませんから」
「もう、店長さん! 意地悪するなら、モデルだってやめちゃうんだから!」
「わわあぁ、それは裕美さん、勘弁して下さい。分かりました。消します、消します!」
良いショットなのに残念だなあと、真面目にそう答えながら、モニター画面に映る[消去]の文字を裕美に見せた。
「ふう、良かったあぁ……」
画像データが消されたことを確認して、半ば悲鳴に近い声を上げていた裕美もやっと安心して息を付いた。
「何や、勿体ないなあ。折角イイ絵が撮れたのに。私も一枚欲しかったわあ」
「ちょっと、美穂姉え。真面目にやってよお!」
「真面目やよお。裕美が恥ずかしがって、どうにもならんさかい、緊張をほぐしてやったんやん?」
「あんなやり方じゃあ、私だって困るし、恥ずかしいわよ!」
「裕美も随分恥ずかしがりやさんなんやなあ。昔、バレエやっとったんやろ? それじゃ人前で踊れんやん?」
「だって、バレエの時は女の子だけだったし……。やっぱり恥ずかしいしわよ……」
だって、男の人にこんな近くから見られることはなかったもん……。
「何言っとんのや!? もう、あんな格好を見られたんや、タッキーの前で恥ずかしがることなんてないやろ?」
「もう、美穂姉え! そんなこと言わないっでたらあ!」
「ほら、裕美、頑張りぃな。タッキーに綺麗になったところを見せるんやなかったか?」
そうね……。美穂姉えの言う通りだわ。
折角、“彼”に綺麗になった自分を見て貰うために、写真を撮って貰うために、ここまで頑張ってきたんだもん。
それに美穂姉えの“悪戯”のせいか、幾分気が楽になったような気がする。
ヴィーナス・ジャージもこの水玉ジャージだって、“彼”に見て貰うために、用意したんだから、ここで恥ずかしがってばかりはいられないわ!

* * *

「裕美さん、もう少し上体をこちらに向けて下さい。そうそう、良いですよ。そんな感じです」
カシャ! カシャ! ジー、カシャ!