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恋するワルキューレ 第二部

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『ヒロミと一緒だネ! でもマイ、子供みたいに見えるヨー!?』
『マイって、一体何歳なんだい?』
『うふっ、23歳ですよ。よく高校生に間違えられますけどね』
『全然、23歳には見えないヨ! でもマイは小さくてとても可愛いよネ!?』
『マイはボクらからすると中学生くらいに見えちゃうヨ! でも、マイは小さい方が逆にセクシーだねヨ』
『アンリやシャルルに、そう言われると嬉しいわあ! もう、照れちゃう!』
『日本の男は見る目がないネ。ボクらだったら、絶対、舞に振り向いちゃうヨ』
『ローランまで、ありがとう。嬉しいわあ……。わたし背が小さいのがコンプレックスだから、そんな風に男の人に褒められたことないもの。じゃあお礼に、ちょっとだけ、サービスしますね』
そう言うと、舞はセットされていたカラオケのリモコンで曲の検索を始めた。
『あー、ありました。フランス語の歌だから入っているかなーって思ったんですけど。
ローラン、アンリ、シャルル。ちょっとフレンチ・ポップスを歌うから楽しんでってね!』
『フレンチ・ポップスかい。うれしいネ。フランスを思い出すよ』
『イイね。楽しみだナ。マイ、それでどんな歌を歌うんだい?』
『ウフフ……。それは聴いてのお楽しみです』

 あら? あの舞がカラオケなの!?
裕美はちょっと意外な目で舞を見ていた。
裕美を驚かせる程、大人の女”の強さを見せ付けていた舞が、カラオケでアピールなどど本当に子供の様に可愛らしい手でアピールを始めたからだ。
そうよね、やっぱり舞もわたしより4つも年下だもんね……。子供っぽくて、可愛い所もまだあるんだわー。実際、舞って小さくて可愛いらしいし、抱きしめたくなるような雰囲気があるものね。まあ、ローランまで嬉しそうに舞に話し掛けているけど、今日は少しくらい許してあげるわ。
裕美はニコニコと“お姉さん的”な目で可愛い舞を眺めていた。
 しかし――、裕美のそんな安穏とした気持ちは、画面に表示された曲名を見て、一瞬で吹き飛んでしまったのだった。
 えっ、舞!? そんな歌を……!?

“Moi… Lolita”《モワ...ロリータ》

えっ? ちょっと、舞? 本当にその歌を歌うの!? 
ダメよ、ダメよ! そんなの反則よー!!

 舞は裕美の慌て振りなど全く気にすることもなく、フワフワした髪と膝上のミニを揺らせながら、その曲を歌い始めた――。

Moi je m’appelle Lolita わたしの名前は“ロリータ”なの
Collegienne aux bas コレジェンヌ《中学生》で
blues de methylene ソックスの色はメチレン・ブルー
Moi je m’qppelle Lolita わたしの名前は“ロリータ”よ。本当なの
Colereuse et pas 怒りっぽいけど、
mi-coton, mi-laine コットン《子供》でもウール《大人》でもないの
Motus et bouche お願い。
qui n’dis pas a maman 絶対“ママン”に言っちゃダメよ
que je suis un phenomene わたしがあの“ロリータ”だなんてね
Je m’appelle Lolita でも“ロリータ”だけど子供じゃないわ
Lo de vie, 私の胸はもう大人と同じよ
lo aux amours diluviennes 愛と命のミルクが溢れそうなんだもん

オオー…… ≪。
Mai, c’est jolie...《舞、可愛いよ》
Mai, mon petite !《舞、モン・プティ!》
アンリやシャルルだけでなく、ローランまでもが、舞の甘い香りに誘われている。
この歌は“Alizee”《アリゼ》という15歳の女の子が、“わたしはロリータよ”と、挑発的な歌詞を歌い、フランスだけでなく全ヨーロッパで一大センセーションを巻き起こした曲だ。
フランス人はロリータが大好き。
フランスは“フレンチ・ロリータ”本場の国。
1950年代の“ベベ”《赤ちゃん》こと“ブリジット・バルドー”から、21世紀に至るこの“アリゼ”まで、ロリータ・アイドルを産み出してきた国だ。
しかも舞には、本場のフレンチ・ロリータの様にツンツンした生意気さはなく、メープルシロップや砂糖とバターを混ぜたフレンチ・トーストの様に、ただ甘い香りだけを発散している。
幼さの残る白いミルクに、熟れた桃を混ぜた様な甘い香り。
そして艶やかな肌に、幼さの残る柔らかそうな肢体。
恋愛に関して百戦錬磨の“大人”の舞が、その小さいロリータな肢体を見せ付ける様に歌うのだから、フランス人のローラン達が魅せられるのも無理はない。

C ‘est pas mas faute 私が悪いんじゃないわよ
Et quand je donne わたしが猫みたいな声を出して
ma langue aux chats 降参しているのに
Je vois les autres みんな私の上に
tout prets a se jeter sur moi 身体を投げてくるのよ
C ‘est pas mas faute a moi 私のせいじゃないんだからね

舞は男を誘う様ないやらしさやわざとらしさを一切感じさせず、あくまで自然に、身体を軽く揺らしながら「わたしはロリータよ」と歌い続けた。
フランス人の男の人にこの攻撃は強力過ぎる!
アンリやシャルルは既に舞の歌に心を奪われた様に視線が釘付けだ。
ローランさえも、時折、舞と視線が微妙に絡み合うのが分かる。
キャー、舞! ダメー!!
ローランまで持って行っちゃイヤーー!!

* * *

「センパーイ、おはようございます。昨日は楽しかったですねー?」
ううっ、舞ったら……。わたしは気が気じゃなかったわよ……。
ロワ・ヴィトンのオフィスで挨拶をされても、裕美はつい恨めしそうな目で舞を見てしまう。
「舞、昨日はひどいわよ。舞があんな歌を歌うなんて反則じゃない?」
「あら? 先輩だって、“ヴァネッサ・パラディ”の歌を歌ってたじゃないですか? あの人って今、ジョニー・デップの奥さんをしてますけど、元々はあの“セルジュ・ゲンズブール”がプロデュースしたロリータ・アイドルだったんですよね?」
「だって……。“ヴァネッサ”の歌は恥かしかったけど、ローラン達に喜んで欲しかったんだもの……」
「恥かしがることないですよー! ローラン達にもスゴイ好評でしたよ!」
「本当? 舞もそう思った?」
「“ヴァネッサ”は先輩のイメージにぴったりですよ。日本人は年下に見えますからね。先輩だって十分ロリータの範疇に入ります!」
「そんな舞、わたしがロリータだなんて無茶を言わないでったら!」
「そんなことないですよ。先輩は会社じゃ“出来る女”のイメージで通してますけど、髪を降ろして眼鏡を外せばすっごく可愛いですよ。フェミニンな服を着れば、フランス人のローラン達からみれば完璧なロリータです。裕美先輩の違うイメージを見せれはローランも喜びますよ! やっぱり女は男の人を喜ばせなくちゃダメですよ!」
「そんな……、ローランを喜ばせるだなんて……」