郊外物語
私達は、都内のホテルで二日過ごした後、お父さまがまだマンションにいるかどうかをこっそり見に行くことにしました。携帯は切ったままにしていましたが、試しにオンにすると、武蔵境の電話番号と違う番号が着信歴に表示されていたからです。私達はレンタカーの窓から遠くの私の部屋を小雨越しに眺めました。明かりがついていました。近づくのはまずいだろうと判断して、五日市街道を西へ進みました。懐かしくなって津田の寮を見にいきました。さらに西へ走り、その夜は奥多摩か秋川に泊まろうと相談していたところで、後ろから黒のトヨペットがつけてきているのに気がつきました。立川の繁華街に逃げ込んで巻こうと思い、五日市街道を左折しました。人通りはおろか車一台通らない寂しい道です。運転は私がしていました。