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郊外物語

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押し込むと、もと来た道を走らせました。途中で銀行に寄り、お父さまには申し訳なかったけれど、自由に使ってよいと持たされていたカードから限度額を引き出しました。文房具屋に寄って判子を合計四本買いました。着いたところは武蔵野市役所。二人の戸籍謄本をファックスで送ってもらい、大学のゼミの教師と友達の名前を保証人として使い、その場で婚姻届を出しました。すべての手続きを終えて私が達郎にむかってにっこりと微笑むまで、達郎は一言も口をききませんでした。
マンションで、ともに暮し始めて三日目に、お父さまから電報が届きました。それまで何度も電話が鳴りましたが、お父さまとしゃべるのが怖くて出ませんでした。お父さまは、結婚の事後承認を求める私の電報に対して、激怒の返信を送ってきましたよね。達郎の過去を調べ上げ、よりによってこんな犯罪者と結婚するとは、とかんかんです。お父さまは、すぐに離婚すべし、こちらは結婚が法的に無効であると役所に申し出るつもりだと書き送ってきました。警察に誘拐されたと申し出て手配を頼むことにした、とも書いてきましたね。翌日すぐさま上京するとの電報が届いたので、私達は身の回りのものをトランクに詰め込んで、レンタカーで逃げ出しました。後で知ったことですが、双方の同意で結婚したのに、夫が妻を誘拐したと主張するのは奇怪に受け取られたらしく、警察は、すぐに動かなかったそうですね。結局は、受け付けたものの、あてになりそうにない。それで、お父さまは伝家の宝刀をお使いになった。国分寺のおじ様に助けを求められたのでした。
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦