郊外物語
当たりにして、今まで付き合っていた三津田君を含めての同世代の男の子たちが、一挙に精彩を欠くガキに成り果てました。三日目には、彼の精神の躍動の向こうから、私には計り知れない諦観悟り絶望暗黒退廃神秘が漂ってきました。私には、この饐えた、エキゾチックな、得体のしれない香りが、フェロモンとして身体的な作用をもたらしました。なんとしてでも誘惑しようと決意しました。うまくいきました。あの夏の宵、新庄は、申し訳ないことをした、と両手をついて謝って、闇に消えました。
新庄が姿を消したのは、火のついてしまった私の目を醒ますためだと、私は勝手に解釈しました。新庄が私に悪い印象を持たなかったからこそ、無理に身を引いて私の転落を防いでくれているとも思いました。そこに新庄の優しさ、思いやり、責任感を感じました。スキャンダルをばらして脅して乗っ取って、などといかにも悪ぶっていながら、実際は黙って身を隠すなんて、けっこう誠実な男じゃないか。ああ、私はなんてうぬぼれていたことか。盲目であったことか。ありきたりの心理にはまって身動きのとれない馬鹿女であったことか!
私は、九月にテレビ局の補欠入社試験を受けました。まったく期待していませんでしたが、二週間後に合格内定の通知をもらいました。新庄とのことを打ち明けたり相談したり出来る友人知人などはもちろんいません。しかしどうしても誰かに語りたくて仕方ありませんでした。私は、たまたまテレビ局に入社することになったから、というきっかけからの思いつきで、夏の体験をテレビ用のシナリオ形式で書いて、テレビ局に持ち込みました。編成部の人たちは不審げな顔をしていましたが、局主催のシナリオ新人賞の応募作として扱ってくれました。翌年の二月に賞をとったと連絡がありました。生々しい迫力が確かに作品にこもっていたと自分でも思います。受賞式当日、お偉方五人が勢ぞろいしている前に呼び出されて、円満退社の手続きをとらされました。私は社友となり、局の座付きシナリオライターになったのです。
新庄が姿を消したのは、火のついてしまった私の目を醒ますためだと、私は勝手に解釈しました。新庄が私に悪い印象を持たなかったからこそ、無理に身を引いて私の転落を防いでくれているとも思いました。そこに新庄の優しさ、思いやり、責任感を感じました。スキャンダルをばらして脅して乗っ取って、などといかにも悪ぶっていながら、実際は黙って身を隠すなんて、けっこう誠実な男じゃないか。ああ、私はなんてうぬぼれていたことか。盲目であったことか。ありきたりの心理にはまって身動きのとれない馬鹿女であったことか!
私は、九月にテレビ局の補欠入社試験を受けました。まったく期待していませんでしたが、二週間後に合格内定の通知をもらいました。新庄とのことを打ち明けたり相談したり出来る友人知人などはもちろんいません。しかしどうしても誰かに語りたくて仕方ありませんでした。私は、たまたまテレビ局に入社することになったから、というきっかけからの思いつきで、夏の体験をテレビ用のシナリオ形式で書いて、テレビ局に持ち込みました。編成部の人たちは不審げな顔をしていましたが、局主催のシナリオ新人賞の応募作として扱ってくれました。翌年の二月に賞をとったと連絡がありました。生々しい迫力が確かに作品にこもっていたと自分でも思います。受賞式当日、お偉方五人が勢ぞろいしている前に呼び出されて、円満退社の手続きをとらされました。私は社友となり、局の座付きシナリオライターになったのです。