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郊外物語

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お父さま、玲子です、お変わりありませんか? 言ってる意味は、病状がどんどん悪化していないかとざっくばらんに訊いているのです。お父さまが、高血圧症で、リュウマチで、糖尿で、冠動脈壁肥厚であることは知っています。ふふっ、インポテンツであることも知っています。情報源はだれか、見当はおつきでしょう。それら諸々の症状がさらに悪化しないことを望みます、が、無理でしょうね。お父さまは、私の身は心配なさっても自分のことにはさっぱり無関心ですからね。私がお父さまを心配させた揚句、お父さまの身体を悪くさせているとしたら、お変わりありませんか? などといい気なことを口にして、すみませんでした。失礼しました。
さて、随分長い間、ろくな便りもお出しせずに、申し訳ありませんでした。お父さまに何をどこまで言っていいのか、よくわからないまま十四年も時がたってしまいました。あの親不孝な狼藉からもう十四年ですよ。私だってオバさんの仲間入りをしてしまいました。お父さまは、こんなこと、聞きたくないでしょうけれど、私はもうオバさんなの。ただのオバさんになってじっとしていられればいいんだけど、そうはいかなくなったので、手紙を書いた次第です。お父さまに心配はこれ以上かけたくないけれど、最後に心配してくれる人はお父さましかいないと思ってるから、こんなこと書いちゃうのよ。ごめんね、お父さま。
亭主のことを書きましょう。お父さまが大嫌いなあいつのことです。私はお父さまに話そう話そうと何度も試みたけれど、お父さまは聞く耳持たんって拒否なさったから、実情を御存じないわよね。
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦