郊外物語
五時過ぎに孝治と奈緒が帰ってきた。出迎えた真砂子の前で、二人は手をつないだままがたがたと震えていた。黒革靴に紺の長靴下、紺のオーバーに海老茶色のベレー帽。半ズボンとスカートの違いがあるだけで、二人ともいまどき珍しい制服姿だ。ランドセルを背負っている。肩や帽子に融けかかった雪が乗っている。本当に寒いのだ。天気予報では、雪が降るなんていってなかったのに、と思いながら、二人を追い立てて風呂に入れた。風呂はすでに沸かしてある。二人は仲良く一緒に入る。風呂から出た二人は着替えをしておやつを食べると、バッグを下げてお出かけである。月、水、土は、英語教室に通っている。真砂子が車で送り迎えをする。土曜日は、午前中に授業がある。二人を送りつけて、義人と真砂子はテニス場に向かう。子供たちは、授業が終わると電車に乗って世田谷に泊まりに行く。真砂子は、赤のフェアレディの後部座席に二人を乗りこませると、市の西の端、多摩川沿いにあるマンションまでドライヴする。