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郊外物語

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何時だろう。明日は昼まで寝ていよう。ああ眠い。あそこを拭くのさえ面倒だ。いまので妊娠? このあいだの生理はいつだったろうか。眠気で思い出せない。こんなに健康なのに生理はよく狂う。どうしてだろう。わかってるくせに。いや、わからないぞ。どうして? まさかもうすでに妊娠していたら? このあいだの生理は……。四週間は確実に過ぎている。義人の子供か。望むところだ。義人は、医者のくせに、コンドームをつけない。コンドームをしての性交は、やったことにならない、などという。そのくせ、今赤ん坊を育てられる環境には無い、あと三年はがまんしよう、などとも言う。三年後には、四十過ぎてしまうのに。今晩のように泥酔状態近くまで飲ませてから、精子を略奪するよりほかに手は無いかもしれない。義人との間に子供ができたら、一応家族共同体形成計画の第一段階は完成したことになるだろう。チャンスは逃してはならない。富美江さんはどうだったんだろう。さっさと二人の子供を産んで、安定状態に至ったのか。自分のような、後発の女は不利だ。不公平だ。二人の子供は、よくできた子たちだ。世田谷に行って、私たちとおばあちゃんや義弟一家とのあいだの橋渡しをやってくれている。親善大使だ。民代おばあちゃんは二人の言うことは、はいはいとよく聴く。やがては、世田谷とこことは和解して、大きな家族になるだろう。人間のわけ隔てない深いつながりは、家族のつながりに尽きる。富美江さんは世田谷とはどうだったんだろう。彼女は、やはり医者の娘で、生まれ育ちが義人と似ていたから、はじめはうまくいってたでしょう。けれども、あの人、努力しない人だったから、だんだんまわりの人の言うなりになって、素直だけど食い足りない、頼りない、という評価を受け入れざるを得なくなったでしょうね。腺病質で。結局白血病でお亡くなり。会ったことは、四,五回しかないけれど、影の薄い、線の細い人だったわ。私は義人の強チンに成功して、彼を手に入れたと躍り上がって喜んだけど、それは甘かった。義人は、抜け目なく富美江さんとすでに寝ていて、こっそり婚約していた。私は五年近く待たされたんだ。必死で三角関係を維持してきたんだ。最後に彼女に会ったとき、変な顔をして私を見てた。こいつが自分の後釜になる女か、っていうふうに。富美江さんは、私の堂々たる体躯を見てうらやましがっていたはずだ。彼女は、性的には決
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦