郊外物語
サイドテーブルの上に首の長いスタンドが置かれている。一晩中つけっぱなしだ。毎晩その下で、義人が本を読む。今日はさすがに酔っているので、本を広げて片手で支えているが、同じページを見つめているだけだった。真砂子は、風呂場の行為の続きを推し進めるべきかどうかを考えた。
右の体側を下にして、右の耳を枕に押し付けたまま、左の手のひらで義人のへその周辺をまさぐってみた。バスローブの紐がほどけていて、さすっていると、バスローブが左右にどんどん開いていった。初めて会ったころに比べると、義人は、貫禄がついた。脂肪だけでなく、筋肉も増えた。
下着をつけていない下半身を、ゆっくりと経巡る。こういうことをさせた女は、富美江と自分以外にはいないはずだった。義人は、真顔で真砂子に言ったものだった。単発的な、落ち着かない、大急ぎの、その場限りの、どうのこうのの、は、無いとはいわないけど……
義人が、うーんと唸って、本をほおりだし、真砂子に向き直った。
ペニスが真砂子の右腿の付け根に接触したまま、上下に小刻みに脈打っていた。真砂子は左の尻を引き寄せられた。その右腕の上から、お返しに義人の右の尻を左手で引き寄せた。尾?骨の先端から中指を下にずらして肛門周辺を二周三周となぞってあげる。ペニスの先から液が少々垂れた。腿にぬるぬる感がある。
義人の顎が目の前にあった。こうして面と向かってみると、義人は随分と大きい。父親がいなかった真砂子は、大きな大人の男から抱きすくめられたことがない。アイツハ、チビダッタ。息が酒臭い。その臭いは義人の息からのものだけではないだろう。目の前の喉仏が薄暗闇の中でうごめいて、つばを飲み込む音がかすかに聞こえた、ような気がした。真砂子は、胸を突き出して、義人の肋骨に押し付けた。
「あーあ、わたし、しあわせだわ」
「僕も、子供たちも、どんなに君に感謝しているか、君はわかってないよ。理想的な奥さんだし、お母さんだよ。ねずみのようによく働いて、ウサギのようによく交尾する」
「私、そんなにエッチかしら」
「少なくとも十年前と比べると、格段に進歩したな」