郊外物語
テレビを消した。ほかの事を考えようと試みた。二人の子供は今頃どうしているだろうか。世田谷のうちで、お祖母ちゃんやいとこたちとまだ騒いでいるのだろうか。いや、何時だ、もう十一時だ、とっくに寝ているはずだ。
良い子たちだ。継母の真砂子をマミーと呼んでくれる。真砂子の話をよく聴いて、よく笑ってくれる。行儀がよく、勉強ができて、お手伝いもよくしてくれる。肩をもんでくれるし、白髪も抜いてくれる。もっとも、白髪は一本あたり五円とられるが。二人とも水泳と英会話を習っている。真砂子が泳いで見せると手をたたいて褒めてくれる。インストラクターより上手だと言ってくれる。そりゃ、沖縄の海と急流で鍛えられているもの、と言うと、眼を輝かせて、沖縄に連れてって、と言う。なんとかわいいこと!
真砂子は立ち上がって振り返った。義人と玲子は、ラップとは似合わないチークダンスをしていた。達郎は、いかにもくたびれたといった様子で、ソファに坐ってビールをちびちび飲んでいた。
真砂子は、達郎の隣に坐ってしまった。達郎は、立ってグラスを持ってきた。真砂子にそれを差し出すとビールを注いだ。真砂子は受け取って一口飲むとつい話しかけてしまった。
「達郎さん、もうひとつわかったみたいよ。あの、お立ち台みたいな岩が不自然だわね」
達郎は、口を捻じ曲げて笑いながら答えた。
「ビンゴ! あとひとつ!」
新庄たちが帰ったのは十一時半だった。真砂子はざっと片づけをして、むずがる義人を風呂に入れた。まさぐってきたので、しょうがない、一緒に入った。バスタブの中で試みたが、義人が十分に勃起しなかった。
ふたりがベッドのうえに横たわったのは十二時半を過ぎていた。