郊外物語
警視庁の袋田喜一郎警部は警視総監賞をはじめ数々の賞を授与された捜査一課きっての敏腕刑事である。中背だが全身に鎧をまとったように筋肉が張りついている。五十一歳、剣道六段。眼光はあくまで鋭い。
所轄から本庁に連絡が入ったのが六時ちょうど、袋田の携帯が鳴ったのが六時十五分だった。バツイチの袋田は一人居酒屋で飲んでいた。パトカーに拾ってもらい、中央高速を走り、八王子インターで降りて、問題のマンションの駐車場に乗りつけたところだった。第一発見者がマンションの管理人事務所に待機しているという。発見者が盲人であるところがなんとも奇妙だった。
事件の発生はまだ公にされていなかった。遺体の搬出の際目撃されてしまった近隣の住民には、緘口令を敷いてあった。それには訳がある。



