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郊外物語

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携帯を取り出して一〇四番にかけた。伝えられた番号にかけ、その或ることを確かめた。憤然として立ち上がった時にはイスが後ろに飛んで倒れた。

九階の部屋で、糾弾する真砂子を前に、達郎はソファに横たわったままへらへらと笑っていた。真砂子の脳裏にはさっきから何度も繰り返して、あの光景が映し出された。真砂子は声の限りに罵っていた。
十時十八分にゆっくりと各駅停車の電車がホームの向こうに入ってきて停車した。降りる者が多く乗り込む者はわずかだ。降りた者の過半数は階段口に歩いて行くが、残りは列を作って待っている者の後についた。やがて東京行きの特別快速がホームのこちら側に入ってきた。乗降客が入れ替わり、満員となって電車が出る。しばらく後に普通電車が出発した。最後尾が視野から消えた時点で十時二十一分三十秒を過ぎていた。十八分からその時刻までコーヒー店からマンションは見えない。真砂子がすぐに駅に問い合わせたところ、ここ数ヶ月で時刻表の改定はなかったということだった。達郎の写真はでっち上げだった。達郎は目撃しなかったのだ。達郎は笑いを止めない。
「ちょうどあの時刻に乗換えがあったとは知らなかったな。バレてしまえばしょうがないから教えてやる。あの写真こそが、合成とCGの産物さ。玲子の服装は知っていたがお前のは分からなかったから首だけつけたんだ。テニスコートで撮ったやつを失敬したんだ。ただし、手摺りの向こう側を描くのにちょっとしたミスをしてね。あの日の風があんなに強かったのにお前の髪もあまりいじれなかったしな。何度も見せられる代物じゃなかったのさ。ドラマにCGは使ってなかった」
「じゃ、どうして私にCGの使ってある場所を三ヵ所も見つけろと言ったのよ」
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦