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郊外物語

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子供たちは世田谷に行ったままだ。義人も葬式が終わるとそそくさと世田谷に行ってしまった。義人も子供たちも月曜に世田谷から病院や学校に直行することになっている。義人は来年から真砂子たちがアメリカで暮している間、ここのマンションをどうするか、話し合いをせねばならない。当然真砂子も世田谷に行くべきだったが、疲労を理由に勘弁してもらった。休日である二十三日に盛大なクリスマスパーティーが世田谷で催される予定だった。飾り付けに子供たちが活躍するはずだ。もともとは内輪の集まりだったが、義人兄弟が現在のポストについた後、医療関係者が多数訪れる会となった。真砂子は一度出席しただけだ。二度と出たくなくなった。父親らしき人物に会ったからだ。屋敷にいっぱいの客の中に、真砂子の目を引く人物がいた。某医科大の名誉教授で、日本医師会の理事の一人だ。パーティーの主賓であり、乾杯の音頭も取った。その男の顔つきが自分によく似ていたのだ。相手もときどき真砂子を盗み見ていた。そして急にいなくなった。追いかけなかった。自分の母親と同じだ。義人にこの遭遇の件は言っていない……
ベッドの傍らに立ち上がったが、すぐまた坐り込んでしまった。よくまあ熱を出して寝込ないものだと自分でも感心した。ベッドが坐ったときの衝撃でまだ小刻みに揺れていた。
昨日の地震は、千葉県の房総沖合七十キロの地点が震源地だった。マグニチュード6・4で、多摩地区の震度は5・1。近辺に、死者は出なかったものの、重軽傷者は数十人にのぼり、家屋の倒壊も何件かあった。被害は並みではなかった。真砂子にとってもそうだった。  
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦