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郊外物語

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その人だけが、わがままでいじめっこでわけがわからないのではなく、だんだんと住人のほとんどが、理不尽なことを言いはじめました。ある女性は、娘の宿題を見てくれ、と言ってきました。忙しいからと断ると、高一の問題ができんと? と言われました。出来ないことはないと思いますが、と答えると、すぐさま、娘を連れてきました。太った、というよりむくんだヤンキー娘です。私がそばに付いて英語を教え始めると、すぐに体がぐらぐらして、落ち着きがなくなり、頻繁に携帯で長話をします。ちょっと、用事が出来たけん、と言って姿を消してしまいました。しばらくして、私の携帯がなり、おばさん、できたぁ? と言ってきました。カラオケの音がやかましかった。明日出すけん、はよ、やっといてよ、と言います。何日かして、母親が怒鳴り込んできました。あんた、うちの娘にうそばっか教えてからに、あんたの正体、わかったばい、と怒鳴ります。そんなはずはないと思いますが、と言って、返されたレポートを持ってこさせると、私の解答を、あちこち写し間違えたり、一行とばしたりしていました。娘さんの書き間違えでしたね、と言っても、もうすでに私がインチキだという噂が流れた後でしたし、私の打ったコピーがなくなっていたので、証拠がない。私は、自分の間違いを娘さんのせいにするふてえやつだと、さらに悪い噂が重なりました。
私が頻繁に聴かされた彼らの語り方の一例を挙げます。私が思うことには、と個人的な意見を述べておいて、次の瞬間、それが常識よ、と続きます。この論法に出会うたびに私は不快になりました。私見に、はじめから常識を忍び込ませているなら、個人の意見の振りをして、常識に寄りかかっている。そうでないなら、根拠なくそれが常識でもあると主張するのはずうずうしい。私の知らない常識もあるでしょうが、彼らの意見は、独断と偏見に満ちたものとしか思えませんでした。
作品名:郊外物語 作家名:安西光彦