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ふたりの言葉が届く距離

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 駅を出てタクシー乗り場に着いた時、携帯のアラームが鳴った。今日はもう理奈には会えない。そんな当たり前の結論にやっと愕然とする。
 タクシーに乗り込み、行き先を告げると、俺は理奈に電話をした。

『え? どういうこと?』
 困惑と怒りと悲しみが交り合った声。

『何なの、それ。そんなの親が行けばいいでしょ!』
 事情を説明してもヒステリックな声しか返ってこない。

『いやだ。来て』
「無理なんだ」
『どうして?どうにでもなるでしょう! そんなこと』
「俺は教師なんだ」
『和樹は私の恋人でしょ?!』
 携帯を少し離して呼吸を整える。
「明日行く。それでいいだろ?」
『いや』
「理奈……俺だって、すぐにでも会いたいんだ」
『…………』

 沈黙の中、彼女の声を聞き逃さないように目を閉じて意識を集中させる。

『分かった……じゃあ、来週来て』
「来週?」
『泊っていって欲しいから。来週は無理?』
「大丈夫、必ず行くよ。本当にごめん」
『いいよ。仕事がんばってね』
「うん。ありがとう」

 通話を切り、目的地が迫ってきていても、まだ俺の頭の中では理奈の声が響いていた。