ホロウ・ヒル (1)
奇妙な生き物
木々が生い茂り薄暗い森の中、ウーゴは倒れた木に座りこちらにやってくる騎士の一団の姿を見つめていた。
おそろいの赤いマントを鎧の上からつけた集団はウーゴの姿を見つけると、半円を書くようにウーゴを取り囲んだ。
「貴様がウーゴか?」
立派な肩飾りをつけた騎士が一歩ウーゴの前に進み出た。
「作用でございます。ディートリヒ様のお使いでしょうか?」
ウーゴは膝をつき頭を垂れた。
「そうだ。ディートリヒ様はそなたとの取引に応じるそうだ」
騎士が持ってきた返事に、ウーゴは相手に見えぬよう満面の笑みを浮かべた。
「それは、ありがたい」
「約束の金だ、50入っている」
騎士は金貨が入っている革袋を、ウーゴの手元に投げた。ウーゴは革袋を開き、中の金貨を確かめた。
「確かに」
「例の子供はどこにいる」
「ご心配には及びません。近日中にお屋敷に子供をお連れします」
立ち上がったウーゴの首もとに、騎士が抜いた刃先が当たる。
「子供はどこにいる」
再度発せられた質問に、ウーゴは状況は不利を感じたのかクリストフを預けた娼館の名を騎士に告げた。
「ロベリアにある『小鹿亭』という娼館に預けております」
騎士は頷くと、のど元に突きつけていた剣でそのまま喉を切り裂いた。
「……」
喉を裂かれたウーゴは悲鳴を上げることなく、地面に崩れ落ちた。
あふれる血で気道がふさがれて苦しいのか、苦悶の顔でのたうち回るウーゴを一瞥した騎士は、部下にとどめを刺すよう指示をした。
作品名:ホロウ・ヒル (1) 作家名:asimoto