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恐怖の女

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 分かってんのよ。この女が私を利用してる事くらい。
 でも今回の事はフツーに嬉しかった。

 だって私みたいな女が、男の人の為に料理を作れたんだもの。
 そりゃ、あんなもの食べてはくれなかっただろうけど、でもそれでも――
 料理を作っている間、私は幸せだった。幸せすぎて夢中になって、ちょっと作りすぎちゃったケド。

 初めてのキスだって出来たし。
 メグミが「キスして! それが別れの決め手になるから!」って言ってきた時はどうしようかと思ったけど、でもしてみて良かった。

 仕方が分からなくて、関係ない所までしまくっちゃったけど……
 でもこんな機会でもなきゃ、私には一生無縁だったと思うから。

 うん。別に私――幸せだわ。

作品名:恐怖の女 作家名:有馬音文