恐怖の女
「なんでだよぉ〜〜、そりゃ俺には勿体ない彼女だったよ? 可愛いし、オシャレだし? そんで俺の下らない話をいつもニコニコ聞いてくれてさぁ、なのになんでだよ……」
俺は突っ伏した体をゆらりと起こすと、親友の顔を睨みつけた。
「怖い顔で俺を見るな」
「見たくもなるだろうがよ。肉じゃが女のせいで捨てられたんだからよぉーーー」
「えぇ!?」
目の前の男は心底驚いたようで、ただでさえデカイ目をさらに大きく見開きながら驚愕した。
……そりゃそうだよ。俺とメグミは誰から見てもラブラブだったんだ。なのに――
「あんのクソ女ーーーー−っ!!」
大声を上げて立ちあがった俺の服を慌てたようにひっつかみ、俺の心の友は強引に俺を椅子へと座らせた。
「落ち着けって! いくらなんでも声デカすぎだろ」
「……すまん」
怒りで自分を見失う所だった。そうだここは家じゃない。場末の居酒屋だ。他の客にも迷惑がかかる。少しは大人しくしよう。
な?
俺って周りにもちゃんと気を使える空気の読める男なんだよ! 俺のそういうトコ、メグミも好きって言ってくれてたんだよ! なのに……なのに……!!
「あんの!」
「タケシ」
「すまん。また我を失うトコだった」
「生中お持ちしました〜」
そこへ2杯目の生中が届く。今日はもう飲む! 吐くまで飲む! し、吐いてまた飲む! 俺の涙はビールで出来てるんだ! チキショウ。