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恐怖の女

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「あの女、許さねぇ!」

 俺はそう言うと、ジョッキのビールを一気に飲み干した。
 安いチェーン店の居酒屋は、誰ともなくざわめいて喧騒が辺りを支配している。
そんなガヤガヤとした空気は、今の俺にとっては実に心地が良い。気がねなく喚けるからだ。

「なんなんだあの女は! いきなり俺の家に上がり込んできたんだ! 彼女が来るって言ってるのに!」
「でも家に上げたんだろ?」
「上げたんじゃない! 上がってきたんだよ! なんかすげー荷物持って上がってきたんだよ!」

 あの女のニタァっとした笑顔が脳裏をよぎり、俺は思わず身震いした。

「紙袋3つだぞ!? 荷物!! しかもその中身なんだったと思う!?」
「服とか?」
「肉じゃがだよ! 紙袋3つ分、ぎっしり詰まった肉じゃが!!『タケシくん、これ好きだったよね?』って言ってねぇし! 俺、一言もそんな事言ってねぇし!」
「そんで、その女は?」
「肉じゃがみてぇな顔しやがってええええええええええええええ!!」
「はははっ、いや、だからその女は?」
「……思い出したくもない」
「へ?」

 困惑する15年来の親友をよそに、俺は目の前の安っぽい机に頭から突っ伏した。

「おい、タケシ。どした〜? おーい」
「……メグミに捨てられた」
「へ?」

 親友の2度目の間抜けな声が耳に届いたのと同時に、俺の頬を涙が伝った。

作品名:恐怖の女 作家名:有馬音文