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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(3)

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そう言って、ボートを停めた。
しばらくは、嘘だ!、何の魚の姿も見えないではないかと思った瞬間!
『私の体を大きく引きずられるように、強い感触の「引き」が感じた』
それと同時に、これは、大きいぞ!、もうこれ以上逃すものか!
私は身体中のエネルギーをひとつに集めて、「念力」をこめた!
ジョージが、大声で、アドバイスするが・・・
「引いて!」「ゆるめて」と何度も言いますが、もう、私の耳には届かない、いえ、何
を言ってるのか、理解など出来ないし、理解しようと思わえなかった!
私の全体重をかけて、一本の釣り竿を握りしめ、絶対に逃さぬぞ!
サーモンの逃げようとするエネルギーはすざましいものだった!
この釣りボートを私たち三人、高津さん、私、ジョージを乗せたまま引きずりながら、暴れ回る・・・
もう、ただ、ただ、逃したくない!と、必死で、サーモンと大格闘した。
その時間は、一時間はゆうに越えただろうか、やっと、私の粘り勝ちの勝利だった。
サーモンの大きさは180cmの大物、巨大な、キングサーモンだった!
このサーモンは、純輔に釣り上げられた事がよほど、悔しかったのか、釣り上げられ
た瞬間に!!!
『私に、最後の抵抗をして、サーモンの体をピンク色に染めて!』
『そしては紅い血色の尾びれをおもいきり、私の顔に、一撃を与えて、こときれた』
その瞬間、私の右眼が、まるで、炎で焼かれるような、強烈な熱い痛さを感じて、失
神して倒れこんでしまった。
その瞬間、私は、すべての光が消えて、真っ暗な闇の世界に入ってしまった。

(四十二)
純輔はその時、何が起きたのか自分が何をしたのか?どうなってしまったのか、何も
覚えてはいない!、意識を取り戻した時、純輔は、アンカレジの病院の治療室のベッ
トの上だった。
医師の診断の結果、左目はすこし傷ついただけで、時期が来れば快復して、見えるよ
うになるが、問題は右の目だ!右の眼球が酷く傷がつき、右眼の視力はもう、快復が
難しいだろうとの診断だった。
あまりにも、一瞬の出来事で、純輔は混乱して、今の自分の状況を理解出来なかった。
まるで、映画の中での撮影のような錯覚だとさえ思えた、そのような撮影場面を演じ
ている長いシーンのつづきのような錯覚に思いたかった。
監督からいつかは「カット」の声がかかり、暗闇は、光が射し、眩しいほどの、輝く
世界に戻れると何度も思えた混乱する精神状態のだった。
病室の中で、純輔はベットに横たわりながら、少しずつ、少しずつ、夢だったのか現
実に起きた事だったのかを思い起こして行った。
幸いにも、仕事は、大半が終わっていたので、純輔が立ち会わなくても、高津さんや
伊達さんが手助けをしてくれた事で、十月入ってすぐに、アラスカのドキュメンタ
リー映像取材は完了した。
後は、日本へ帰国してからの編集作業があるだけになって、純輔はまだ眼の視力が快
復していないまま、帰国してそのまま、カコの入院している、同じ病院の眼科に入院
した。
カコへはまだ、純輔が事故にあった事は知らされてはいなかった。
相変わらず、カコの病状は悪くて、時折意識を無くしては両親はその度に、緊張して
不安が募る辛い状態だった。
けれど、純輔の所属事務所から、カコの両親へは、連絡があり、純輔がアラスカで事
故にあった事を知らされた。
帰国と同時に、カコの入院してる同じ病院の眼科に入院した事も伝えられた!
その時、純輔の右眼は光を取り戻す事がないだろうと、知らされていたが、カコの両
親は一途の望みを持って、祈るしか方法はなかった。
今の日本の医学は、世界のどの国よりもすぐれている!
きっと、最先端の医学を持って、もう一度、眼の手術をすればきっと、視力は快復して、光を取り戻してくれると、思いたかった。
いつかは、自分たちの息子として、カコと幸せに暮してほしいと願っている!
「愛する義理の息子、純輔だ!」
純輔の姿を見たカコの両親は、変わりはて、憔悴しきった純輔の無気力な姿!
やはり、純輔は日本に帰国しても、思うような視力の快復が得られず、又、愛するカ
コがなぜ、自分を避けているのだろうか!
なぜ、カコは私のそばに来てくれないのかが、気になって仕方なかった。
カコの胸の手術の結果も聞かされていない中で、起きてしまった純輔の事故により今
は暗闇の中で手探りで生きているふたりを結び繋げる糸は切れてしまったのだろ
うか・・・

(四十三)
純輔はひどく混乱していた、突然の闇の世界に閉じ込められて、心が惨めだった、寂
しさでカコに思い切り抱きしめて欲しかった!
そう思う気持ちとは裏腹に、心の何処かでは、このような弱い姿、惨めな姿を、カコ
に見せたくない思いも確かにあった。
けれど、どうしても聞かずにはいられない、純輔は、思い切って、カコの事を、たず
ねた!
けれど、カコの両親は、しばらく沈黙の後、深呼吸するように・・・
「せっかく、純輔さんが、アラスカから帰国できたのに、すみませんね!」
「軽い感染症にかかってしまって・・・」
「今、カコは、すこし、熱が出てね!」
「ドクターに病室を出る事を止められているのよ!」
「もう少し快復するまで待っていてくださいね!」
「私たちも、カコに中々あえないのよ・・・」
そう言うだけが、精一杯の両親の言葉だった。
カコの両親は、とても、今のカコの状態を純輔に話す事は出来なかった。
純輔が今どんな状況であれ、カコが乳がんの手術をする事だけアラスカへ行く前につ
たえていたが、今、肺への転移とおそらくは、胃や脊髄へも、転移の疑いもを考えら
れるとの診断されていた!
カコの体力の快復を待って、急ぎ、改めて肺の手術が待っていた!
けれど、カコの乳がんはもう、乳房の摘出だけでは、手の施しようも無いほどのがん
の進行が早く、絶望的な状態だった!
純輔もまた精密検査の結果、やはり、アラスカの病院での診断と同じく、左眼は、視
力の快復が望めるが、右眼は視力快復が望めない事がはっきりと診断された。
人の運命は、明日の事も予想がつかないし、分からないと、良く、聞く事だけれど、
まさか、自分の身に起きるとは思ってもいなかった。
純輔は待っても、待っても、カコは逢いに来てくれない事の不安と自分自身の暗闇の
恐怖でかなり苦しく、混乱の日々がつづいた。
だが、純輔の持ち合わせている、本来の精神力で、片目でも、確かに、不自由ではあ
るが、生きて行く自信を取り戻し始めていた。
純輔の正式な、検査結果では、右の眼を移植手術によって、以前のような、健康な眼
を取り戻す事も出来るとも、説明されていた。
その事を、純輔は、すべてにおいて、まるで、純ちゃんと私の両親は、実の親子のよ
うに、話し合い、相談しあっていながらも、私の両親はカコの現実を隠したままで、
純輔へのかりそめの喜びを分かち合った。
その事は、私の現実を、純ちゃんへ話す事は!
『絶対にダメ!』
私は、この先の事を思うと、少しでも、純ちゃんが希望を持って生きていて欲しかった、辛くて、悲しみの現実を知る事は、後からでも間にあうし、現実を知る事は、たとえ
一日でも先であって欲しかった。
「眼球の提供者は、中々出てはこないと思うけれど!」