ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(3)
(三十九)
時には、三島さん自身がボートを動かしてお客さんを案内して、フィッシングポイン
トまで行くもある!
アラスカは魚や動植物の保護基準がとても厳しく制限されていて、ワンシーズンに現
地の人でさえ、ひとりが釣れる魚の数が決まっている。
たとえば、キングサーモンなどは、ワンシーズンに確か、2本までと決められていて
(もちろん漁業を生活の糧としている人は、捕れる数量は違うけれど)、でも、そうた
やすくつれるわけでもなく、確か、つりの出来る日程も厳しく決められていたように
聞いていた。
だから、日本から来て、何日か滞在しても、キングサーモンを釣りあげる事がたやす
く出来る事ではなく・・・
三島さんは、わざわざ、遠いところに来てくれるのだからと、心からのもてなしをし
て歓迎してくれる、何も、お金を儲けようなどとは、到底考える事もなく!!!
だから、評判の良い事が新たに人を呼び寄せて、お断りするのにも難しいほどの人気
の場所になってしまった。
高津さんと純輔は、三島さんとの連絡がつかぬままに、セスナ機を飛ばして、あの懐
かしい場所へ着いた。
相変わらず、丸太を並べただけの桟橋は今にもくずれそうに見えるが、どっこい、セ
スナ機が巻きおこす大波にもびくともせずに、しっかりと建っていた。
ふたりがセスナ機を降りると、家の扉が開き、三島さんが私たちに駆け寄って来た。
「お待していましたよ!」
「もう、そろそろ、着くかしらと思ってね!」
「今日は、もう、どなたも、来ませんから~」
「もう、嫌になってね、ちょっとずるしたのよ私!」
そう言いながら、にこにこと笑顔で私たちを迎えてくれた。
「今年の夏から秋になっても、困った事に!」
「天候が不順で、サーモンが全くのぼってこないの!」
「他のお魚も殆ど遡上してこなくてぜんぜん釣れないのよ!」
「秋が過ぎて、もう直ぐ冬が来てしまうのに・・・」
「だから、お客さんの機嫌が悪くてね、気が休まらないのよ!」
そう言って、頭をかしげて、手を大きく広げた仕草をしてみせた。
「今日から一週間ほど、私は病気になるつもり!」
「だから、気を使わずに、ここで過ごしてちょうだいな!」
「もしなんでしたら、お熱も出してもいいわ~~~」
「自分のやりたい事がたくさん溜まってしまっていてね!」
「何もおかまい出来ないけれど、その辺にある物を食べてくださいな~」
そういいながらも、美味しい日本茶と、どら焼きを手早く出してくれた。
「お客さんのお土産ですけれど、食べてみて!」
「李さんは、そろそろ、こんなのが恋しい頃でしょう・・・」
いつの間にか、本当に、三島さんは、何処かに消えていなくなった!
(四十)
外は気がつかないうちに、稲妻が走り、途轍もなく大きい雷が鳴って、この家が揺れ
動くほどのすさましい爆音のように響き渡っていた。
窓から外を見ると純輔が今まで見たことの無い、物凄い大雨が降っていた!
三島さんはどうしたのかと思っていたら、雨に濡れて戻って来て・・・
「もう少しで、ボートが流されるところだったわ~」
「間にあって良かった、今日はいきなり来たわね!」
「おふたりが着いてからで、カミナリと大雨に出あわなかった事!」
「幸運だったわね・・・」
「ここのところ、毎日、こんな感じなの、天候が予測できないのよ!」
「突然、嵐になったり、吹雪になったり!」
「そうかと思えば、とても、暑くて、一時的に、真夏になったりするのよ!」
「確かに昔から、アラスカは一日のうちに四季があると言われているけれど!」
「なにか、変なのね!最近のアラスカは!」
「だから、サーモンもここまでのぼってこられずにいるのかしら~~~」
「もう秋も過ぎて、冬が来るという時期なのに~」
三島さんは濡れた体や衣服をふきながら、そんな事を言っていた。
そんな、ふと、思いついた事を、お互いに話しながら、時に、ふいっと、いなくなる
三島さんの不思議な姿や行動を見ていて、高津さんは、純輔に、何気なくつぶやくよ
うに・・・
「ここは気兼ねと時間は必要ないところなんだ!」
「自分が過ごしやすいようにしていれば!」
「何かが分かって来て、気分が良くなる場所だろう!」
確かに、そうだと、純輔も少しずつ感じてはいたが!
二日ほど、何もせずに、寝て起きて、話をして、森を少し歩き、河を眺めて、ゆった
りとした時間が過ぎて行ったけれど、純輔には心からこの自然とゆったりとした世界
には浸りきれずにいた!
どうしてもふとした瞬間に「カコ」を想い、恋しさと不安な気持ちになって来る事を
抑えられなかった。
三島さんが、突然、声をかけて来た!
「どうやら、やっと今頃に、サーモンが上がって来たから!」
「釣りをしてみては、いかがかしら?」
そう言って進めてくれた。
以前から、純輔も、サーモン釣りをしてみたいと思っていた事で、さっそく実行する
事になって・・・
九月の終りになる今頃になって、ほんの数匹、、サーモンが河を遡上している姿を確か
に観られた。
生まれ故郷を目指し、勢い良く、力づよく、ただ、いつもの年よりも、かなりおそい
遡上だった。
サーモンの姿も、小さくて、数が少ないと、ボートを操る、若いひげ面の青年「ジョージ」君は、得意げに、ボートを右へ左へと、巧みにあやつり、フィッシングポイント
へ案内してくれた。
どのくらい、河をさかのぼったのだろうか、河幅は海のように広くなったり、又、大
きなボートでは通り抜けられないほどの狭い場所を次々と走って行く・・・
気持ちの良い、川風を受けて、時には、波しぶきをかぶる事もあり、突然驚かせては、ジョージは、にやりと薄笑いして、でも、その表情が少しも嫌味には感じないおおら
かさがある青年だ!
まだ、ハタチ前の三島さんの息子で、アラスカ大学の学生だった。
だが、誰も、三島さんの本当の子供か、養子なのか、分からないが、そんなことは誰
も気にしてはいない、ここでは小さな事だ!
(四十一)
三島さんは、人としての信頼感で周りの人たちを大好きにさせる名人です、殆どの人が、直ぐに好感を持って付き合いたくなる人なのです。
普段の生活では、ジョージ君はアンカレジに住んでいて、彼が時間が出来た時だけ、
ここに来て母の手助けをしていた。
その自然な親子関係がとても素敵だったし、誰もが心地よい好感を持てる母と子の姿
だった。
やっと、ジョージのお勧めのフィッシングポイントに着き、釣り糸を流し、何度と、
サーモンは食いつくけれど、その度に、あっさり、逃げられてしまう!
かなり、悔しくなって、純輔は、持ち前の負けん気をむくむくと、気持ちが荒くなっ
てしまった!
この時点で、釣り人としては失格だったのでしょうね!
純輔は今までに、何の魚釣りも経験のない、全くの素人だった!
だから、最初は、ジョージがアドバイスを送る事に従っていた、けれども、何度もサ
ーモンにだまされて、逃げられるとだんだん意地になっていらだって来る・・・
「今度、ヒットしたら、絶対に逃さぬぞ!」
「自分に気合を入れ、念じて!、肝に銘じた!」
そんな純輔の苛立つ姿を見て、ジョージはすこしポイントを変えてくれて!
「ここ、ナイス、ポイント!、」
「絶対ね!」
時には、三島さん自身がボートを動かしてお客さんを案内して、フィッシングポイン
トまで行くもある!
アラスカは魚や動植物の保護基準がとても厳しく制限されていて、ワンシーズンに現
地の人でさえ、ひとりが釣れる魚の数が決まっている。
たとえば、キングサーモンなどは、ワンシーズンに確か、2本までと決められていて
(もちろん漁業を生活の糧としている人は、捕れる数量は違うけれど)、でも、そうた
やすくつれるわけでもなく、確か、つりの出来る日程も厳しく決められていたように
聞いていた。
だから、日本から来て、何日か滞在しても、キングサーモンを釣りあげる事がたやす
く出来る事ではなく・・・
三島さんは、わざわざ、遠いところに来てくれるのだからと、心からのもてなしをし
て歓迎してくれる、何も、お金を儲けようなどとは、到底考える事もなく!!!
だから、評判の良い事が新たに人を呼び寄せて、お断りするのにも難しいほどの人気
の場所になってしまった。
高津さんと純輔は、三島さんとの連絡がつかぬままに、セスナ機を飛ばして、あの懐
かしい場所へ着いた。
相変わらず、丸太を並べただけの桟橋は今にもくずれそうに見えるが、どっこい、セ
スナ機が巻きおこす大波にもびくともせずに、しっかりと建っていた。
ふたりがセスナ機を降りると、家の扉が開き、三島さんが私たちに駆け寄って来た。
「お待していましたよ!」
「もう、そろそろ、着くかしらと思ってね!」
「今日は、もう、どなたも、来ませんから~」
「もう、嫌になってね、ちょっとずるしたのよ私!」
そう言いながら、にこにこと笑顔で私たちを迎えてくれた。
「今年の夏から秋になっても、困った事に!」
「天候が不順で、サーモンが全くのぼってこないの!」
「他のお魚も殆ど遡上してこなくてぜんぜん釣れないのよ!」
「秋が過ぎて、もう直ぐ冬が来てしまうのに・・・」
「だから、お客さんの機嫌が悪くてね、気が休まらないのよ!」
そう言って、頭をかしげて、手を大きく広げた仕草をしてみせた。
「今日から一週間ほど、私は病気になるつもり!」
「だから、気を使わずに、ここで過ごしてちょうだいな!」
「もしなんでしたら、お熱も出してもいいわ~~~」
「自分のやりたい事がたくさん溜まってしまっていてね!」
「何もおかまい出来ないけれど、その辺にある物を食べてくださいな~」
そういいながらも、美味しい日本茶と、どら焼きを手早く出してくれた。
「お客さんのお土産ですけれど、食べてみて!」
「李さんは、そろそろ、こんなのが恋しい頃でしょう・・・」
いつの間にか、本当に、三島さんは、何処かに消えていなくなった!
(四十)
外は気がつかないうちに、稲妻が走り、途轍もなく大きい雷が鳴って、この家が揺れ
動くほどのすさましい爆音のように響き渡っていた。
窓から外を見ると純輔が今まで見たことの無い、物凄い大雨が降っていた!
三島さんはどうしたのかと思っていたら、雨に濡れて戻って来て・・・
「もう少しで、ボートが流されるところだったわ~」
「間にあって良かった、今日はいきなり来たわね!」
「おふたりが着いてからで、カミナリと大雨に出あわなかった事!」
「幸運だったわね・・・」
「ここのところ、毎日、こんな感じなの、天候が予測できないのよ!」
「突然、嵐になったり、吹雪になったり!」
「そうかと思えば、とても、暑くて、一時的に、真夏になったりするのよ!」
「確かに昔から、アラスカは一日のうちに四季があると言われているけれど!」
「なにか、変なのね!最近のアラスカは!」
「だから、サーモンもここまでのぼってこられずにいるのかしら~~~」
「もう秋も過ぎて、冬が来るという時期なのに~」
三島さんは濡れた体や衣服をふきながら、そんな事を言っていた。
そんな、ふと、思いついた事を、お互いに話しながら、時に、ふいっと、いなくなる
三島さんの不思議な姿や行動を見ていて、高津さんは、純輔に、何気なくつぶやくよ
うに・・・
「ここは気兼ねと時間は必要ないところなんだ!」
「自分が過ごしやすいようにしていれば!」
「何かが分かって来て、気分が良くなる場所だろう!」
確かに、そうだと、純輔も少しずつ感じてはいたが!
二日ほど、何もせずに、寝て起きて、話をして、森を少し歩き、河を眺めて、ゆった
りとした時間が過ぎて行ったけれど、純輔には心からこの自然とゆったりとした世界
には浸りきれずにいた!
どうしてもふとした瞬間に「カコ」を想い、恋しさと不安な気持ちになって来る事を
抑えられなかった。
三島さんが、突然、声をかけて来た!
「どうやら、やっと今頃に、サーモンが上がって来たから!」
「釣りをしてみては、いかがかしら?」
そう言って進めてくれた。
以前から、純輔も、サーモン釣りをしてみたいと思っていた事で、さっそく実行する
事になって・・・
九月の終りになる今頃になって、ほんの数匹、、サーモンが河を遡上している姿を確か
に観られた。
生まれ故郷を目指し、勢い良く、力づよく、ただ、いつもの年よりも、かなりおそい
遡上だった。
サーモンの姿も、小さくて、数が少ないと、ボートを操る、若いひげ面の青年「ジョージ」君は、得意げに、ボートを右へ左へと、巧みにあやつり、フィッシングポイント
へ案内してくれた。
どのくらい、河をさかのぼったのだろうか、河幅は海のように広くなったり、又、大
きなボートでは通り抜けられないほどの狭い場所を次々と走って行く・・・
気持ちの良い、川風を受けて、時には、波しぶきをかぶる事もあり、突然驚かせては、ジョージは、にやりと薄笑いして、でも、その表情が少しも嫌味には感じないおおら
かさがある青年だ!
まだ、ハタチ前の三島さんの息子で、アラスカ大学の学生だった。
だが、誰も、三島さんの本当の子供か、養子なのか、分からないが、そんなことは誰
も気にしてはいない、ここでは小さな事だ!
(四十一)
三島さんは、人としての信頼感で周りの人たちを大好きにさせる名人です、殆どの人が、直ぐに好感を持って付き合いたくなる人なのです。
普段の生活では、ジョージ君はアンカレジに住んでいて、彼が時間が出来た時だけ、
ここに来て母の手助けをしていた。
その自然な親子関係がとても素敵だったし、誰もが心地よい好感を持てる母と子の姿
だった。
やっと、ジョージのお勧めのフィッシングポイントに着き、釣り糸を流し、何度と、
サーモンは食いつくけれど、その度に、あっさり、逃げられてしまう!
かなり、悔しくなって、純輔は、持ち前の負けん気をむくむくと、気持ちが荒くなっ
てしまった!
この時点で、釣り人としては失格だったのでしょうね!
純輔は今までに、何の魚釣りも経験のない、全くの素人だった!
だから、最初は、ジョージがアドバイスを送る事に従っていた、けれども、何度もサ
ーモンにだまされて、逃げられるとだんだん意地になっていらだって来る・・・
「今度、ヒットしたら、絶対に逃さぬぞ!」
「自分に気合を入れ、念じて!、肝に銘じた!」
そんな純輔の苛立つ姿を見て、ジョージはすこしポイントを変えてくれて!
「ここ、ナイス、ポイント!、」
「絶対ね!」
作品名:ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(3) 作家名:ちょごり