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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(2)

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私のところによったばかりに、三日三晩寝ずでの行程は、いくら良く鍛えた体であっ
てもきつい事だろうと、私は気が気じゃなかった。
「じゃ、行ってくるね!」
「今度、逢う時は、ちゃんと僕を成田に迎えに来てね!」
「アンカレジに着いたら又、電話するから・・・」
そう言って、純ちゃんからの電話は切れた、けれど、アンカレジからはなぜか、純ち
ゃんから電話は無かった!
そんな純ちゃんからの約束を心待ちにしていて、連絡が無い事が気になり、不安がよ
ぎりながらも・・・
私は、純ちゃんがアラスカに戻った、数日後に、やっと体を動かせるまでに快復して
病院に入院した。
今度の入院は、今までの入院とは違って、体にメスを入れる手術!、しかも、女性と
しての象徴のような『右乳房を取る』
両親にも、純ちゃんにも、右の乳房を取る事を私はは言えなかった!
だが、他への転移を防ぐ為にも、乳房を取る方法しか、私の場合は外になかったのだ
った。
純ちゃんは、感のいい人だから、ある程度、感づいていたようで・・・
「もしも、もしもの時だよ!」
「君の胸が片方だけでも、僕は充分だと、思うよ!」
そんな、気休めを、さりげなく言ってくれる人だ!
私の両親は、かなりのショックだったようで、ただ無言で、部屋に入って来た。
両親は、担当医からの説明を受けて分かったのだった、乳房を取り除く手術だという
事を・・・
私はあえて、両親へも純ちゃんにも知らせずに、私ひとりで決めての入院だった。
私の大切な人たちに何度も辛い話を聞かせたくなかった。
確かに、両親のショックは大きいけれど、これからの日々、どんなに辛くて、苦しむ
事には変わりなかった。
相変わらず、入院と同時に、私の腕は、点滴の手ぐさりに繋がれた日々の始まりだった。
血管が細くて、注射針が上手く刺さらないのも同じだ!
いや、前よりも、もっと、試し打ち回数が多くなった気がする。
「痛いの、痛いの、何処かへ、飛んで行け・・・」
幼かった日、母がよく私に言ってくれたおまじないが懐かしく、虚しくも心をよぎっ
て行く。
たちまち、点滴液が漏れて、私の腕には、いくつもの黒いあざで膨れ上がってきた、
この状態も、同じように何度も繰り返した事だった。

(三十五)
看護士さんの中には、さりげない言葉で・・・
「カコさんは痛がりやさんだからと笑いながら言う人もいた」
私はそんなに、わがままで、大げさに騒ぎ立てる人間なのだろうか?
もう、自分がどんな人間なのか、分からなくなって来た。
私には拷問のような辛い日々がつづく・・・
そのころ、純輔は、精一杯、渾身的に取材撮影進めて、アラスカでの取材も終盤を迎
えて、久しぶりに、フェアバンクスの郊外、深い森の中にある、高津さんの家で、し
ばしの休息を楽しんでいた。
九月中旬でも、ここは時々雪が降る冬を迎える時期だった。
家の中は暖炉を焚いて暖かく、快適に過ごせているが、いざ、一歩外に出れば、直ぐ
にからだごと凍りつくほどの寒さだ。
フェアバンクスは、北極圏からすこし南に位置している、アラスカでは第2の大都会
だけれど、高津さんの住む、この森は、広大なアラスカでの事、お隣の家が果てしな
く遠い、森の中の一軒家だ。
必要最小限の家具があるだけのこじんまりとした家だ、ご夫婦が寝る、寝室があるが、後は大きな書棚のある二十畳ほどの広さの中心に暖炉が置かれていて、食べ物やその
他の煮炊きする物は、すべて、この暖炉の上に置くだけで、出来上がっていた。
純輔は、このリビングのソファーに寝かせて貰った。
何時間か寝た頃に、高津さんにいきなり起こされた!
「李さん、今、素晴らしいのが出てます!」
「外に、急いで出てください!」
そうせかされて純輔はダウンジャケットを急いではおり、慌てて外へ出てみた!
その世界は、あまりにも、あまりにも、大きな空!!!
いや、大宇宙のうねる音がするように、青黒い虹と、簡単な言葉では表現をしてはい
けないほどの気高さと神秘の世界がひろがっていた!
それは「光のロンド」「天空からの光のメッセージを伝えるのように!」
ダイナミックに揺れ動く、大宇宙から聴こえる音楽のように・・・
純輔はあまりに美しくて、感動と共に震えるような恐怖感さえ覚えるのでした。
私は、純ちゃんが、終盤の仕事に集中出来るようにと思い、私は、入院後に純ちゃん
から電話があっても勤めて明るい声で話す努力をし、手術日を純ちゃんに言わずに・・・
「今ね、私よりも、もっと、大変な患者さんが多いらしいのよ!」
「私は、ちょっと、待たされてるようなの!」
そんなふうに言ったり、時にはどうしても気分が悪くて辛い時などには私の変わりに
母に電話に出てもらう時もある!
「今、検査に行って、ここにいないのよ!」
そんなへたな嘘でごまかしの言葉が私をなを苦しめていた。


(三十六)
私はもう、すべて、検査は済んでいて、手術日は三日後に決まっていた。
遥かに遠い地、アラスカがまるで、宇宙の彼方にあるような気がして、もう、電話さ
え出来ないのだと思い悲しかった。
手術日の前々日夜明け前に、私は、誰にも言わずに、病室を出て、ただ、ぼんやりと、行き先も決めてなく、電車に乗った・・・
気がつくと、何処かの海の見える場所を歩いていた、この前、純ちゃんが来てくれた
時に見た夢の中の風景のようだった。
ふと、母の顔を思い出して、又、母に心配をかけてしまった事に、申し訳ない気持ち
とは裏腹に、ただ私を知る人のいない場所、何処かに行ってしまたい思いになっていた。
でも、もう一方の私がいて、やはりまだ生きていたい!
こんな形での別れは両親も純ちゃんも許してはくれないと囁いていた、私と言う存在
は私だけの意志で終りにしてはいけないのだと気づいた。
「ママ、ごめんなさい!」
「心配しないで、直ぐに戻るから・・・」
「たぶん、今、湘南の海辺にいると思うけれど!」
「もう少し、海を見たら、帰るから・・・」
「ママ、今朝のご飯は何を食べたの?」
「ママの作ってくれるオムレツが食べたい!」
「私、とても、おなかすいたわ~」
「今からここで、何か食べたら、帰るね!」
不思議な事に、自分の心の中で母に語りかけていた、思ってもいなかった言葉が、す
らすらと出て来て、自分でも驚いていたが、見ている海の風景は、夢の中で見た事が
ある場所だと思った。
入院前に、純ちゃんが私を寝ずに看病してくれていた時に見た夢の中の海が今、目の
前に広がっていて、エメラルド色の美しい波が揺れていた。
海べの波打ち際を、私はひとりで歩く、初秋の海べは、少し肌寒い!
まだ、朝早い時間だからか、広い海岸には人影は無く、誰もいない遠浅の砂浜がつづ
いていた。
私は裸足になりひとりでゆっくりと歩いて、海水に足をつけて立ち止まる!
私を支えていた砂を、すこし緩やかな波が次々と打ち寄せるたびに削られて採られて
いく、それは、あの夢の中で見た風景そのものだった。
まるで、私の命を削り取るかのように怖さを感じた。
海水の冷たさと青緑色の波が私の身体中を染めて行くように、ぞくぞくした悪寒を感
じて我に返った気がした。
正気を取り戻した私の足元の砂はすっかり波に削り取られて、海にのみこまれて、海