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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(2)

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水はひざ上にまで来ていた。
気づかぬままに私はいつしか海の中に置き去りにされたように茫然として立っていた
のだった!
ふと、私はなぜ!、何を求めて、ここまで来たのだろうかと、自分の心に問いかけて
みた!
明日の手術が不安だったのかもしれない、孤独さに負けそうな自分を振るい立つ気力
が欲しかったのかもしれない、そんな答えの無い心の葛藤が、ただ、寂しさや悔しさ
と悲しみをごちゃ混ぜになって、心の中で、純ちゃんを呼び続けていたのかもしれない!

(三十七)
私は現実をしっかりと受け止めようと決心して、病院に戻った、やはり、体温が三十
八度もあり、血圧も異常に高くなっていた!
私は平熱が三十五度くらいだし、血圧も低い方で高いくても100~60が普通だっ
たが、今、手術の前だというのに、血圧が140もあり、担当医は、明日の手術は難
しいと、告げに来た。
そのご、手術日がどの位の期間、先送りになるか、予想がつかなかった。
「とにかく、血圧を下げて、体温を下げて、それからの事です!」
手術予定日前日に逃げ出したと思った担当医師は、きつい口調で言った!今は私が悪
いのだから、何も言えない!
担当医師の指示に従うしかないのだと、父も母も、オロオロとして、何も手につかぬ
様子だった。
私は高い熱のために、その姿を幻のような錯覚をしながら、何度も、何度も、苦しさ
と胸の痛さで、失神しては目覚めての繰り返しだった。
そして、たくさんの夢を見ていたが、その殆どは、覚えていなかった。
なぜか、山登りなど、体験も記憶もないのに、何度も何度も、何処かの谷底へ、体が、一瞬に落ちて行く!
その感覚だけは、不思議に覚えていた。
やっと体調も快復して、いよいよ、私の手術の計画が本決まりとなり、体調は万全と
は言えない状態だけれど、もう、これ以上、先へは伸ばす事が出来ないのだった。
微熱が中々下がらずに、手術をのばせるだけのばしたが、担当医の決断を信じるしか
ないと、両親も改めて承諾書にサインをした。
「右乳房の全摘出手術だ!」
私は手術の最中の事は何も分からなかった、全身麻酔によるものだったから、幼い頃
から、病弱ではあったが、私の体にメスが入るのはやはり、緊張と恐怖感を無くす事
は出来なかった。
五時間以上の大手術は、両親も予想していなかった。
手術室から、集中治療室に入っても、私は気づかない、眠ったままだった。
だが、両親は、手術の結果の報告を受けて、愕然として、言葉も出なかったようだった。
「がん細胞が、肺と胃へ転移していた事を告げられた!」
その病状は、もう、手術は出来ないほどのがん細胞の広がりだと、伝えられた。
「肺の組織検査をしたけれど、悪性のがん細胞が確認されました!」
「すでに、今回の手術では肺のがん細胞を取り除く事はしていない!」
「又、数日後に、胃や脊髄の検査が必要な事を伝えられた。」
あまりの残酷な結果報告に、母は、気絶して倒れてしまい、そのまましばらくの間寝
付いてしまった事を、父から、だいぶ後になってから、自分の病気の事、母が倒れた
事を聞かされた。

(三十八)
カコは自分が生まれて来たことを恨みたくなるほど、何処までも、両親を苦しめて、
悲しませて、親不孝ばかりしか出来ない娘だと思う!
つくづく嫌になる悲しみと苦しみの中で、私は両親に対して申し訳なさと自分自身の
不安感で心も体も混乱して、ただ、ベットに寝ているしか、今は、何も出来ない絶望
的な思いが募るばかりだった。
その頃、遠く離れた地にいる純ちゃんの身にも、大変な事態が起きようとしていた!
アラスカでの映像取材も、チームが一丸となって努力した事でとても良い物が出来あ
がる予感でチーム全体が浮き足立った状態で、興奮気味だった。
仕事も殆ど終わりに近く、取材チームも、気持ちが楽になり、安堵感が大きくなって、その日の取材予定が終わると夜は連日の酒盛り宴会が続いた。
純輔はカコの病気の事が気になる現実もあり、どちらかと言えば、高津さんも、純輔
もアルコールには弱かったし、宴会の雰囲気の騒がしさが連日続いて、すこし気疲れ
していた時期だった。
残りの取材は、他のプロデューサーでも、大丈夫だと、高津さんの純輔の苦悩を察し
た事と、純輔のもう一度お会いしたい思いもあって、ふたりで三島さんの所に行く事
なった。
あの女性「三島美佐子さん」の姿を見ているだけで純輔は勇気をもらえるような気が
していたので、彼女の家を訪ねて行く事なった。
次の日、出発前に純輔は、カコに何度電話しても繋がらない事がとても気になりなが
らも、セスナ機に乗り、アラスカの深い森の中へ飛んで行った。
カコの両親は、娘の非常事態を受け止めることが出来ずに、毎日、不安と混乱する思
いで虚しく、落胆し、どうする事も出来ない怒りがこみあげて来る、両親の心をずた
ずたにしてせめつづける、拷問のような胸の痛さに耐えながら、時間だけが過ぎて行
った。
カコは、手術後の経過が悪く、快復が思うように進まずに、油断の出来ない状態が続
いていた。
意識も精神状態もはっきりと快復しない状態がつづいていた・・・
もちろん、そのような状態であることをアラスカにいる、純輔へ知らせる事など、出
来るはずも無く、お互いの連絡が途絶えてしまった。
そして、純輔はカコの事が気なって仕方なかったが、まだ、仕事は終りではなかった
けれど、どうしても、あの素敵な生き方の「三島美佐子」さんに、純輔は不思議に、
母のような、姉のような親しみを感じていて、もう一度お会いして、話を聞いてみた
かった。
無線で三島さんの所へ連絡しても、どうやら外に出ているようで、夏の時期は、とに
かく忙しい!アラスカのダイナミックな、フィッシングを楽しむお客さんが日本など
外の世界から来る事で、三島さんは自然なかたちで釣り宿の役目を担う事になって、
今では、皮肉にも三島さんの生活を支える大きな資金になっていた。
元々ご自分から望んではじめた事ではないが、どうしても断れない、知り合いの旅行
社から頼まれて、釣りのポイントへ案内した事がきっかけだった!
言葉の面でやはり日本語や英語をフランス語を話せる事で、フィッシング客を託され
て、釣り舟を出し、少数の人の宿泊を引き受けた事で自然に今の状態になってしまっ
たと、三島さんが豪快に笑って話していた姿を純輔は思い出していた。

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