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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1)

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純ちゃん自身から、故郷の実家に帰るとか、帰郷したと言う話は、私とのお付き合い
を始めてからは、聞いた記憶が無かった。
けれど、純ちゃんと私がもし結婚する事になれば、否応無くご実家との連絡やご家族
とお会いせずにはいられない現実がある。
その事で、純ちゃんの「結婚相手」が、こんな私で良いだろうかと!、漠然とした不
安が広がって行った・・・
純ちゃんは、今、ハリウッドへの出発準備と国内での仕事のスケジュールが一杯で忙
しい状態だった。
毎日、必ず、時間を見つけては、電話をしてくれて、声だけは聴いていても、結婚へ
の準備を始める事が私は出来なかった、だから、私は、純ちゃんに提案した!
「純ちゃんとの結婚をお受けします!」
「けれど、今は、純ちゃんは、ハリウッドへの準備を優先しましょう」
「ハリウッドでの出演が決まった時に!」
「私も一緒に行けるように!」
「元気で、健康な体になれるようにします。」
「だから、今は、私の事を考えずに!
「仕事やハリウッドへの準備に専念してください!」
そう言って、純ちゃんに納得してもらいながらも、気持ちの何処かで、純ちゃんへの
裏切りのような、不安と居心地の悪い、不思議な感情が、常に私につきまとっていた。
退院は出来たけれど、私の体のどこかで、嫌な何かが棲みついているような気分がい
つもしていて、落ち着かない感情が揺れ動いてしまう!
まるで、私の心と体がガラス細工の置物のように不用意に触れてはいけないような危
険感があるように思える嫌な感情だった。
相変わらず、純ちゃんからは定期便のように電話は、何度もある!
ひとりで旅立つ事の不安感があるのか?・・・
「カコも一緒だったらいいんだけどな~」
純ちゃんにしては珍しく、愚痴も言ったりして・・・
もう何年も前から、英会話を話す機会を多く取り入れるなどして準備していたが、や
はり、すべてが英語で話し通す事はかなり苦労があるようだった。
幼児期から身についてしまった母国語の言葉の感性を入れ替える事はそうたやすい事
ではない!
そんな時、私が健康で元気な体であったなら、何かしら手助けが出来るのだろうと考
えては、悲しい思いで苦しく、申し訳なさで、気が滅入る自分が又なさけなくなる。
そんなある日、純ちゃんからの電話で!
「今、飯能の駅に着いたけれど、迎えに行くから、時間が無いので、出かける支度を
して待っていて!」
「ごめん!、いつも急がせてばかりで!」
「今日は、カコのご両親はいる!」
そう言って、純ちゃんからの電話は切れてしまった、何があったのかしら?
今から我が家に来て、直ぐに出かける?
行き先も言わずに、切れた電話を手にしたまま、しばらくは何をどう準備して良いのか、鈍感な私は思いつかなかった。
ふと、純ちゃんの御両親に!そんな思いもしたけれど、その事であれば、きちんと話
してくれるはずだし・・・
「出かけるから!」
確か、そう言ってた!じゃ~何処へ行くの?、着ていく服をどうすればいいの・・・
短い間に、思い悩んでいても、考えがまとまらず、時間はあっという間に過ぎて行く、気ばかりが焦って、何も決まらない!
愚図な私の情けない姿に、母はただ、急いで、急いでと急かせるばかりで、どうして
こうも親子でダメな女なのかしら・・・

(十七)
そして、純ちゃんは十分くらい過ぎた頃、家の前まで走ってきたようで、息を弾ま
せながら、玄関の扉を開けた。
そして、真剣な眼差しで!私の両親の前で正座をして、挨拶をしてから、急に改まっ
た表情で・・・
「お父さんお母さんにお願いがあります!」
「すみませんが、今日は、夏湖さんを、責任もって、お預かりしたいので、お許しく
ださい!」
「あす、僕、アメリカに行きますので、今日は夏湖さんと一緒に過ごしたいのです!」
「ただ、一緒にいたいだけです!」
「気をつけて、大切にしますから!」
「今日、泊まる場所は、所沢の駅前のパレスホテルです」
「あすの朝には、家にお送りしますから・・・」
「あすは、成田までは、僕ひとりで行きますから、もう、荷物も送りましたので・・・」
そう、一方的に話して、両親が何も答えられずに混乱した、落ち着かないようすで、
いると、
「すみません!、すみません!驚かせてしまいますが!」
そう言って、はにかむような、微笑む笑顔が、とても美しいと私は、ただ、純ちゃん
をみつめていた!
これから過ごすだろう時間は純ちゃんにすべてをゆだねて!!!
どんふうに純ちゃんが私に接してくれるのか、まるでぼんやりとした絵画を見るよ
うな?、それでいて、瞬間的に想い描くふたりの姿!はっきりとした何かを考えられ
るほどの恋愛経験の無い私は、純ちゃんのこんな表情をする姿が、私はたまらなく好
きで、恋しくて愛しさを強く感じてしまう、そんな瞬間だった。
「純ちゃん!、私、貴方の奥さんになれたら、どんなに幸せな事でしょう・・・」
そんな想いを心で伝えながらも、私のこの胸の奥で疼く痛みがなんなのか・・・
今、私はこんなにも幸せで心が震えてしまうほどなのに・・・
両親は、「ダメだ!そんな、非常識な事!、を許せると思うか!」
たぶん、心の中では、そんなふうに言っていたと思うけれど、私や淳ちゃんに対して、何も言わずに、嫌な顔もせずに私を送り出してくれた。
私は純ちゃんの励ましで体調が良くなって、退院したとはいえ、病気が治ったわけで
はない!
又いつ、体調が悪くなるか分からない、不安な私の気持ちを察してくれた両親の配慮
が嬉しかった。
純ちゃんは、自分の車を持たないから、殆どが、電車やバスを使うけれど、今日は私
の事を気づかい、私の家から、所沢のホテルまでタクシーを使った、今は、少しでも
節約し、アメリカ滞在に備えが必要な時だから、私の為だと言う、申し訳ない気持ち
とありがたい思いで揺れていた。
純ちゃんは、今、ハリウッド映画のオーデションを受ける為にアメリカへ行く!お金
はとても大切に使わなくてはいけないのに、アメリカ滞在が果たして、どの位の期間
になるのか?
二次、三次と、そして、最終に残れる自信はあるのだろうか、大体の計画つくりを考
えて、国内の仕事を入れずに、一定期間は無収入になるわけだから・・・
そんな事を私は、ちまちまと考えていたし、アメリカでの生活がどんなものになるの
かが、私には想像もつかなかった、ただ、不安な気持ちと、混乱する今、現在の状況が、わけの分からない興奮と、緊張した感情が小刻みに揺れている自分の心がと体が緊張
して、ふらついてしまい、めまいがする、胃の痛みがすこし、痙攣してるように・・・
どうしてこんな時に、こんなに幸せな時間だというのに、私の体は無慈悲にも私の心
情とは裏腹な動きをして、私に意地悪してる!
「ごめんなさい、純ちゃん、こんな私を愛してくださり・・・」
「とても嬉しいし、幸せなのよ、貴方について行きたいわ~」
「何処までも、貴方の心が、嬉しい!!!」
そんな想いが繰り返し、繰り返し、浮かんでは、揺れ動く心・・・

(十八)
通り過ぎて行く街の風景も、私にはただの風の中に消えて行く景色にしか見えないし、眼にとめられないほど、緊張と混乱の中で、車窓を見て、何かを考える気持ちの余裕