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ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1)

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雪景色になっていたが、元々、夏の季節でさえも、一日のうちに四季があるほど、天
候がめまぐるしく変わるところで、今の時期に降る雪はさすがに、冬の根雪ではない
為に、街中では雪は直ぐに消えていた、夕暮れもとても早い!
「李 純輔」ははじめてのアラスカにいても、心の片すみでいつも「杉本夏湖」を感
じながら・・・
けれど、ひとたび、仕事に熱中し、集中力を高めた時、すべてのエネルギーを注ぎ仕
事に取り組んで忙しく時間が過ぎて行くのがとても早かった。
「カコ、ゆっくりとお休みして僕の帰りを待っていてくれ!」

(十二)
季節は秋から冬にかけてのこの時期、特に天候が悪い日が多いのだと、アンカレジの
空港まで向かいに来てくれた、これからアラスカの地で何かとお世話をしてくださる
日本人で、アンカレジの大学院で「極地気象学」を長い間研究をしている「伊達聡介」さんがそう説明してくれた。
伊達さんは、この取材の為にとても多くの助言や手助けをしてくださり、素晴らしい
方にめぐり会えた幸運に感謝したい。
予定していた、極北の町、バローへは飛行機が飛べなくて、諦めなくてはならず、と
ても残念だったが、純輔の尊敬を抱く人と共に過ごせる事が、大きな喜びだった。
「李 純輔」の敬愛する「高津紳一郎」は医師でもあった!」
もちろん、動物写真家としての活躍は、誰もが知る事だけれど、長いアラスカでの生
活の中で、多くの矛盾を感じている事もあるとも話してくれた。
アメリカ合衆国の中で、アラスカ州は、石油が出るために、多くの土地を、理不尽な
開発を進めて、「エスキモーの人たちやアラスカインディアンの人たちなど」大昔から
そこに住み、生きて来た人たちを立ち退かせて開発を進めた。
その事で生活を保障する為、アメリカ政府は、そこに住んでいた人たちにお金を渡す
事になり、その保証金によって、仕事をする事を忘れてしまい、アルコール中毒や麻
薬に手を染めてしまう者が多くいる事が、心が痛むのだと語った。
確かに、アメリカと言う国は、自由で、恵まれた国だ!
わずかな期間での取材ではあるけれど、多くの事を見ても、安易にまとめる事は難し
いけれど、大自然の美しさの影に、又、世界一の経済大国の今を守る為に、光り輝く
裏側には、救いようの無い犠牲者の姿が隠されていた事を知って、純輔は複雑な思い
になった。
高津さんは、アラスカエスキモーや現地の人々の生きる場所と引き換えに受け取った
保証金を使い果たし、生きる事の迷いから、薬物やアルコールに依存して、行き場を
なくした人々を救うボランテア団体の手助けを医師として出来る事をしていると話し
ていた。
アラスカに憧れて、大好きなアラスカに住んでいながらも、矛盾を感じて心が痛む事
もあり、人が生きて行く難しさを感じているとも語っていた。
アラスカでの最後の日は高津さんのお宅にご招待を頂き、フェアバンクスの町から少
し離れた、静かで、深い森の中に、たった一軒だけのお宅で、アラスカインディアン
の原地の女性とご結婚されて、おふたりで暮していた。
奥様の手料理をいただきながら、二人で、お酒を酌み交わしながら、たくさんの貴重
な話を聞かせて頂けた事が、純輔は、とても感動し、言い知れぬ思いになった。
特に、今、現在も、人のすむ街から遠く離れた森の奥に住んでいる、一人の日本人女
性の開拓者精神を貫きながら、ある意味、冒険的な暮しをしてる五十代の女性いて、
とても素敵な生き方の話を聞いてみて、とても驚きと感動でお会いしたい人だと強く
感じた、素晴らしい話だった。
今頃の時期は夕暮れも早く、ここの森は街明かりの届かない、暗く深い森の中にある!
だから家の庭からでも、オーロラを観る事が出来るのだが、今年は天候が不順で、と
ても寒い日があったり、そうかと思えば真夏のような暑さと長雨で、生活が大変だよ!と高津さんは笑いながら・・・「オーロラ、観せてあげたかったな~、本当に残念だよ!」
といいながら、高津さんの写したオーロラの写真をプレゼントしてくれた。

「オーロラ銀色の虹 天空をうねりながら」
「君のいる街へ届け 光の橋をわたる彩りの舞」

(十三)
忙しく過ごしたが、高津さんや伊達さんと過ごせた、アラスカでの日々が、忘れられ
ない貴重で、純輔のこれからの生き方に大きく影響を与えてくれる、素晴らしい体験
が出来たと感じ、感謝の気持ちで純ちゃんは日本に帰国した。
だが、この高津さんとの出会いが、純ちゃんの人生が大きく変わってしまうほどの大
変な出来事が待っているとは、その時の純ちゃんにも、私、カコにも、全く、気づい
てはいなかったし、予測も出来るような簡単な事ではなかった。
純輔の大きな目的だった、アラスカの極北の町、バローをたずねる事が出来なかった
残念さは残ったが大きな心の財産が得られたと思える旅だったと、純ちゃんは、少年
のような純粋さを見せて、興奮気味で、次々と私に話している姿を、私は新鮮気持ち
で新たな感覚を発見して純ちゃんを観ていた。
アラスカから帰って直ぐに、北海道へのロケに出かけて数日後、やっと、時間が出来
たと言って、嬉しそうに、私の病室を尋ねて来てくれた。
純ちゃんはまだ、アラスカでの体験した感動が覚めやらぬかのように、珍しいほど、
饒舌に、ひとしきり話して、気持ちが落ち着いたのか、又、旅の疲れなのか、いつも
のように、この病室の小さなソファーに、純ちゃんの長い足を折りまげて、丸くなっ
て寝ている姿、純ちゃんの無防備さは香しさと愛しさと切なさを感じて、その純ちゃ
んのどんな演技よりも、カッコイイ姿だと思える私の大好きな姿だ!
強い愛情と幸福感はすべての考えや現実を見ない盲目的なまでに狂おしい感情の高ま
りを抑えられずに、私の動きの悪い体で、嬉しさと安堵感と切ないほどの感情が揺れ
動いて、そして悲しみ広がっていく心を包んで涙が流れた。
いつの間にか、私が気づかぬうちに、純ちゃんは目覚めていた。
純ちゃんは、落ち着かない雰囲気で、私の顔を節目がちの美しい瞳で微笑みながら私
を見ては、次の動きをどうして良いのかが、分からない!、そんなふうに、無意味に
からだを動かしては・・・突然!
「カコ!どうする!、」 
「僕を拒否しないよね!」
「僕には、カコ!絶対に、必要なんだよ!」
「カコがそばにいてくれるだけでいいんだ!」
「僕~さあ~もうこれ以上は~待つのは嫌だよ!」
まるで、照れ隠しのように、そう言って、すぐに、忙しく、病室を出て行ってしまった。
私は、何も話せず、応えようがない、ただ、理解出来ない不安が、体の奥のほうから
感じた気がした。
それから、毎日のように、純ちゃんは、私のそばに来てくれる、仕事が終わると、ど
んなに遅い時間であっても、ナースセンターを避けて、誰にも見つからないように、
そーと、部屋に入り、音も無く、私のベットの脇で、しばらく私の顔を見ていて声も
かけずに又そーと帰って行く・・・
ただ、私のそばにいて、私の顔をみつめる!
時には、そっと、私のおでこにくちづけをして、そして、私に唇を重ねて、耳元で言
葉を囁き去って行く純ちゃんのカッコ良さで私は体を熱くする・・・