ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1)
「純ちゃんの唇が、素早く、私のおでこに触れた!」
「ごめん、起こしてしまったね!」
そう言って、照れくさそうに、純ちゃんは笑った、そして、「カコ」はもう、とっくに
お昼を済ませたよね!僕はちょっと、撮影がおしてしまって、時間がずれて、空腹で
お腹が変になりそうだよ!ちょっとここで、食べてもいい?そう言い終わらないうちに、用意してきた、「ゆで卵の白身だけを、口に放り込むように食べていた」
いつもながら、純ちゃんの食事は、まるで、スポーツ選手の肉体をつくる為のような、筋肉質な、それでいて、ムキムキな筋肉ではなく、美しい肉体美を保つ為の食事!
体に必要のない脂肪を燃やし、良い筋肉を付ける、「プロテイン、ミルク、野菜ジュース、きな粉やすりゴマ、そして、お酢、少量を」加えて、シェイカーで飲む前に良くシェイクして、ゆっくりと、噛むようにしてのんでいた。
他に、果物、そして、オイルの入っていない、シーチキン一缶に玉ねぎと人参のきざ
んだ物を塩もみし、水洗いして、塩分を取り除いた物を混ぜて食べる!
炭水化物はほとんど食べない食事!
食事の不満さや欲望を抑える為なのか、純ちゃんは、いつも食べながら、おどけて、
マジックをするように・・・
たまごの白身だけを上手く舌で動かして遊ぶ仕草が、とても可笑しくて、笑いながらも、
辛くて、切ない想いになる!
本当は純ちゃんは、パンもごはんも大好き、少し塩をつけたおにぎりがどんなにか、
食べたい事だろう!
お肉だって大好物、焼肉大好き人間だ!
私は、純ちゃんの心情をおもうと、涙が出て競うになる・・・
そのしぐさが危うい
少年のようなあどけなさが誘う刺激
モノクロームの情景が
大人の男をひきたてる
ほの暗いパリの空に
にあい過ぎるほど物憂い
その唇に懸想する白身遊戯
「俺は白い色が好きです」
私は貴方が大好きです
パリィの恋人達を物語る
理性を忘れた私がいる
私の大好きな俳優、「イ・ビョンホンさんの写真集「パリィ」を見て、私が書いた詩だ
けれど、ふと、こんな詩が思い出された!」
(六)
毎日のトレーニングは、純ちゃんにとって、決して、らくで楽しい事ではないはずだ
けれど、本当に、純ちゃんは凄い精神力で頑張っている!
まだ、正式に、ハリウッド映画に出演出来ると決まったわけではなく、もし、純ちゃ
んの素晴らしい才能が認められて、ハリウッド映画の小さな役であっても、決まって
から、仕事として、活動が始まるのは、たぶん、二年位先の話だ!
けれど、純ちゃんは、今、そのハリウッド映画出演のオーデションを受ける予定でいる!自分の俳優としてのこれからの生き方を賭けてみようと決心しての事だった!
国内では、さほど、俳優として名の知れた存在ではないけれど、以前、ある映画祭で
出会った、ハリウッド映画のプロデューサーに声をかけられた事が、純ちゃんの頑張
りをささえているようだった。
私は、今、純ちゃんの為に役にたつ事が何も出来ない!、それどころか、むしろ、純
ちゃんの足を引っ張っているように思えて、つい、思い悩んでしまうけれど・・・
純ちゃんは、私の病室に来ては、小さなソファーに、純ちゃんの長い足を折り曲げて
丸めて寝ている姿を見ていて、私は、切なさと愛おしさで、心が揺れるけれど、この
瞬間がとても大切で、特別に幸せな時間だった!
「ここでの短い眠りが僕の楽しみなのだから、許してくれ!」
そう言って、私を見つめては、ちょっと、照れ笑いをする、笑顔がたまらなく美しい人!
その表情が、人間の心や感性の奥深さを感じさせて、私は、又いちだんと、純ちゃん
の魅力に魅せられて、虜になってしまう!
あまり、仕事の事やトレーニングの事は、純ちゃんは話してはくれないけれど!、た
ぶん、私も、純ちゃんの薦めで、俳優(とは言っても、主に通行人の役ばかりだけど)ただ、純ちゃんのそばにいられることが、私には嬉しくて、重要な事だった。
今の「カコ」の大切な事は、病気を治す事だよ!
仕事は元気になればいつだって出来るから・・・
いつも、そう言って、私を元気づけて、励ましてくれる・・・
俳優なのに、純ちゃんは、私の前ではとても口下手になる、特に私の病気の事を話す
時は、とても不安な表情になるのが、私にはとても辛い事だった。
奇跡的な出会いから、純ちゃんとのお付き合いは、私に不思議なエネルギーを与えて
くれて、とても元気になり、体調もとても良くなっていた。
ふたりで観た映画『オータムイン・ニューヨーク』は私にとっては思い出の深い特別
の日になった。
以後も、度々、映画を観たり、日帰りの旅行をしたり、音楽会にも出かけた!
純ちゃんは、友人や知人が多く、そのほとんどの方が芸術家だから、いろんなお誘い
を頂くようで、その中から、私にあうものを選んで、いつも突然、私を連れ出す!
それは、常に私の体調を考えての決断だと言う事を、私は気づいているから、ただ、
純ちゃんに申し訳なく、悪いと思いながらも、嬉しく、感謝していた。
今日は、純ちゃんの友人で、ピアニストのK子さんのコンサートにふたりで出かけた、K子さんは、純ちゃんの高校の時の同級生だとか・・・
演奏された曲は、ショパンのノクターンを始め、ほとんどの曲が、私の大好きな曲ば
かりで、純ちゃんは、その辺を考えてくれて、今日も強引に、私を連れ出して来てく
れたのだと分かり、胸が熱くなって、演奏も素晴らしかったけれど、私は、純ちゃん
の心配りが切ないほど、嬉しくて感動し、感謝していた。
けれど、その、帰りのタクシーの中で、私の右胸が、しびれるような痛さを感じて、
不安がよぎって、私はその怖さに耐えていた、やはり、その時が来たのだろうか・・・
(七)
純ちゃんとの奇跡的な出逢いから、私は恋におちて!、すべてが変わって、毎日が幸
せだった!三十五年生きて来て、純ちゃんは、私のすべての価値感を変えてくれて、
どんな小さくて、つまらない事であっても意味があり、その事をどう自分に活かせれ
ば良いかを教えてくれた。
私は幼い時から、病弱だった事で、ある意味、我がままに育ってしまったのかもしれ
ない、又、成長する過程でのその時、その時の年齢にあった、世の中での、知りえる
常識的な事にも疎かったし、どちらかと言えば、面倒で嫌な事を避けるような性格で、人間関係のトラブルなどは極端に避けて生きて来たのかも知れない。
純ちゃんの話す事がとても新鮮に感じ、そして、私には初めて知る物事や関心事もと
ても多かった。
だから私は、益々、純ちゃんを頼りにして信じて疑う事知らない純粋な想いと恋心で
素敵さに魅せられて行った。
純ちゃんに逢うたびに、私自身も洗練された人間になれるような気持ちにさせてくれ
る人なのだった!
それは時に、感動的な喜びであり、又、自分の今まで、あまりにも常識はずれな人間
であったのだと、恥ずかしくなる事でもあった。
けれど、そんな時ほど、純ちゃんは、私を傷つけるような事のない、気づかい、心配
りが感じられて、かえって落ち込む事もあったけれど、それまでの私とは違って、直
ぐに、前向きな考えになれる事が不思議だった。
「カコ」は長く病気をしていたのだから、知らなくても、恥ずかしくない!!!
作品名:ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1) 作家名:ちょごり