ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1)
ブスな私の心は、勝手に純ちゃんを独占してしまうの・・・
ハンサムで素敵な彼は、誰からも愛されて、好かれて、頼りになる人!
だから、私は、自分が情けなくて、苦しい!
独り占めしたい気持ち、ジュラシーがどんどん膨らんでしまう!
そして、私はベットの中で、少しだけ泣くの、いえ、大泣きしてるは心の中でね、でも、音もなく、近づいて来て、そーと、私のおでこにキスをしてくれる人!
それが、優しすぎる彼!
「李 純輔」
連絡もなく、突然、私のそばに来てくれる人!
言葉少なに、優しい微笑みで、私を包んでくれる人!
(四)
私は、束縛される事が、幼い頃から大嫌いだった、だから、学校での授業もたまらな
く嫌いだった、体が小さくて、運動が苦手だったから、体育の授業が特に大嫌いだっ
たし、病弱で運動も出来ない事も多くて、私ひとり教室で自習したり、他の子は、体
育の授業でみんなが楽しそうにドッチボールをしているのを、ただぼんやりと見学し
たり、時には、ふと、授業を抜け出しては、学校の裏山へひとりで登っては、学校で
みんなが元気に運動している姿を、少し後ろめたい気持ちと、元気に走れる子たちが
羨ましい気持ちとでゆれる思いで眺めていた。
病院での生活は、限られた空間で、まさに自由を奪われる不自由さが、私にはたまら
なく嫌だった。
病気なのだから仕方の無い事だけれど、何度も繰り返している入退院で、私の青春は
奪われて来たように感じていた。
あの時、彼、純ちゃんと奇跡の出逢いをした時も確か、退院後の検診での帰りだった、けれど、あまりの突然の出逢いだったから、今でもあの時の事は夢の中での事のよう
に思えてしまう!
「だって、あの、美しき微笑みは・・・」
私の生きて来た、短い生涯の中で、あまりにも素敵過ぎる出来事だったのですもの・・・
彼「李 純輔」は私が診察を受けている担当医の知人だったという事もしばらくして
分かり、その後は、私たちふたりは急速に恋人同士にかわって行ったの・・・
でも、私が、病気が治るまでは、心が通じあえるだけの関係なのよ!
もう、お互い、三十歳を過ぎた大人同士なのだから、たぶん、健康で元気な人間だっ
たら、どんな事も希望が持てる恋愛が出来たのだろう・・・
健康に自信のない私は、純ちゃんに申し訳ない思いになっちゃうけれど、純ちゃんは、今の関係を大切にしてくれている事が、私は分かるから、そんな時は、胸が張り裂け
そうに苦しいけれど、とても嬉しい!
恋をするって、こんなに素敵な気持ちになれて、幸せだったなんて!、私は純ちゃん
とお付き合いしてから、毎日がちがった感情を体験し、感動する事もとても多くなっ
たわ!
それまで、私は映画もあまり観る機会もなかったの、人が多く集まる場所へは、さけ
る生活だったから、もちろん、コンサートへも一度も行った事がなかった。
学生の頃、女の子同士で、アイドル歌手のコンサートに何度か誘われたけれど、いつも、体調が悪くて、出かけられなかった。
けれど、純ちゃんは、私の体調を良く見ていて、今日なら、大丈夫!
そう言って、強引に、連れて行ってくれた。
映画は『オータムイン・ニューヨーク』
そう、テレビ放送では、なんとなく映画を観ていたけれど、音響の凄さにまずびっくり!
画面の大きさ、迫力が凄い!、美しい風景!、美しい音楽!
はじめて見る、俳優の姿!恋物語!
すべてが驚きと感激と言葉に出来ない幸せな感情を体験した、瞬間だった!
はじめての映画鑑賞は、純ちゃんと私自身の恋模様を重ねあわせてしまう、まるで夢
一夜の美しき時間を過ごして、ふたりは(少なくとも私は)生涯でも最大の思い出の
ひとときだったわ~
そして、確かに記憶の中にあった、ニューヨークの街の風景がより身近に感じて、い
つか、純ちゃんとふたりで歩く夢を持ち、リチャード・ギアという、俳優をはじめて
意識した。
もうだいぶ前だったが、純ちゃんが、目標にしている、憧れの俳優がいるんだと話し
た事があった、私は、芸能界や映画の世界にその頃は興味もなかったし、疎かったから、たぶん、あの時に話していた、憧れの俳優が、「リチャード・ギア」だった。
もちろん、その頃は、私はまだ、俳優になる!などとは考えてもいなかったし、この
私が、愚図でのろまで、恥ずかしがりやのこの私が、俳優になれるとは思ってもいな
かった!
私は、まだ、純ちゃんと奇跡の出逢いをして、間もない頃で、お互いの事を理解して
いなかった、ただ、私は、純ちゃんに一目ぼれだったから、純ちゃんのすべてが素敵で!美しかった!カッコ良かった!
私自身、何も無い、つまらない人間だと、思い込んでいた時期だったから・・・
純ちゃんから、誘われた仕事がなんなのか!
すぐには理解出来なかった!!!
「ちょっと、僕と、一緒に出てみないか!」
「今、僕が出演している映画に!」
「ただ、監督さんが、歩いて!」
「そういったら、歩けばいいから・・・」
「君は、何も考えずに、僕と一緒にね!」
「カメラの前を僕と腕を組んで歩けばいいんだ!」
「何も心配せずにね!」
「ただ、僕のそばにいてくれればいいよ!」
純ちゃんはそう言って、映画の撮影場所へ案内してくれた、私は何も分からないまま
無我夢中で、今もあの時の事はよく覚えてはいないけれど、何とか、私の映画初出演
は、監督さんのオーケーを頂いた。
この私が、映画の中のワンシーンを、純ちゃんと恋人同士でデートしてる姿を、映画
の中で、映像に映し出された時、私は、言葉もなく、驚きと感動で、涙が止まらなか
った。
その映像と同じく、その後は、毎日の生活の中で、自然なかたちで、腕を組み、寄り
添いながら歩けるふたりになって行く事に時間は必要なく、同時進行で、心を通わせて、愛を感じられるふたりになれた。
あれから、五年の歳月は、一瞬に過ぎてしまったようにも思えるし、ひとつ、ひとつ
の思い出をたどれば、長い時間であった気もする。
今、病院のベットの中で、まるで、夢を見ていたような時間だったけれど、あれは現
実の事、純ちゃんが、私をすべての愛で支えてくれた日々だった!
今、純ちゃんは、ハリウッドを目指して、トレーニングに励む日々!
だから、もう三日も私は純ちゃんの顔も見れていないけれど、寂しくはないわ~
きっと、オーデションに受かってくれると私は信じているから・・・
(五)
いつもの事だけれど、純ちゃんは物音も立てずに、私の前に来てくれる!
私は、何度目かの入院中で、体調も気分も落ち込みがちになるけれど、今は、純ちゃ
んが俳優として一番大切な時期!、どんなに逢いたくても、我慢するのよ!と、自分
に言い聞かせてはいても、やはり、逢えない事が寂しい!
私の病院での一日は、ほとんどが点滴に左手を繋がれての暮しだ!
点滴液が漏れてむくみやアザだらけの、お世辞にも、美しい手とは無縁な、醜い姿に
なってしまった。
限られた行動の中で、たいていはベットの中で過ごしている。
私は気づかぬうちに少し眠っていたようだ、眠りから覚め、ふと、眼を開けると、私
のおでこにキスをしようと、純ちゃんの美しい顔が、私の顔に重りあって、驚くほど、近かった!
それはまるで,夢のつづきのように・・・
作品名:ブスな心が恋してる!貴方がいるから・・・(1) 作家名:ちょごり