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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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5. 新田尚子

新田尚子との再開は、思っていたよりずっと早く訪れた。
その日の放課後、沢村は帰り、俺は一人で屋上に
寝転んでいると、逆さ向けに
太陽を透かして覗き込む女が現れた。
「こんにちは」
「・・・どうも」
眼だけ動かして答える。
「相島沖史君でしょう」
「別に・・・そう思いたかったらそう思えば」
「あたしは2組の新田尚子。よろしく」
挨拶と同時に奇妙な動作を見せた。
勝った相撲取りが取り組み後にするようなやつ。
「何それ。流行ってんの?どうせ俺はやらないけど」
「あのさぁ、相島君さぁ、あなたスカしすぎです。
あなたはいつもその捻くれた死にかけの深海魚みたいな
どろりとした視線で世界の何処を見てる訳?」
のべつ幕無しに語る女。何気に詩的センスがある。
「いや、漠然と、上を」
「上に何があるって言うの?」
「スカートの中身」
新田尚子は『中身』を開けっぴろげにしている事に気付き、
即座に手で隠したが、ふと思い出したようにまた手を外した。
「なんだ、体育後じゃん」
「何故ブルマを穿いている。学校も終わったのに」
「めんどいから。で、相島君、ちょっとお話いいですか」
「なんでまた俺なわけ?」
「あんたみたいな男は本当珍しいから。
人間学を専攻してるあたしとしては好奇心が沸くわけよ。
なんつうか、あたしの知識の全てを賭けて分析したいのね」
「深海魚だからか?」
「?」
鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔。
「さっき言ったろ?俺が死に掛けの深海魚だって。
まあ、それ言い得て妙なんだけどさ」
「へっへー。そういえばどろりとした眼球とか言ったっけ?
ごめん。売り言葉に買い言葉ってやつ」
「何故俺に興味を持つ。俺は変態だぞ」
「変態って自分で言うんだ。ふーん。
そういう奴ってさぁ、大した事ないんだよ、大抵。
本当の変態ってのはぁ、うんこ哺乳瓶につめてとか、
カメラ廻してるからおしっこして、とか言うんだよ。
「なんで知ってんの?」
「男なんてみんなそんなもんだからね・・・」
ふっ、とそう言う新田尚子の表情には、何処か暗い影と、
諦めに近いものが一瞬浮んだ気がしたが、すぐに消えた。
気のせいか?そう言えば、さっき体育館で感じたのと
同じインスピレーションだった事に気付いた。
「・・・とにかく俺は、
変態でどうしようもないの。危ないよ。シッシッ」
「どんなふうに?」