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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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だが・・・俺が気になったのは、手前側に居る
女子の方だった。
唯一無二の存在感。今は霧岡怜奈と一緒に居るが、
男に対しては高圧的な態度、
自分以外の何者を受け入れ難い佇まいも
容易に想像できる。
その根拠はあの目・・・
孤独の中で何十年も暮らさないとあの目は出来ない。
全てを氷漬けの世界から覗くような、目。
何故かその目に俺は、どうしようもないシンパシーが在った。

「霧岡さん、今日も可愛いなぁ、素敵だ。
体操服姿、実に芸術品だ。あのまま真空パックしたい。
隣のクラスになれて、微かにだけど幸せを感じてるよ」
「おい・・・沢村、こっちの手前のは誰だ?」
「え?手前?あれは新田尚子。確かに美人だけど・・・
ちょっと、悪いウワサがある女の子でさ・・・
それより、霧岡さんだよ。どうよ、あの清廉潔白そうな
天使の羽衣が舞い降りたような体操服姿は。
あ〜。霧岡さんは天使だなぁ」

悪い噂・・・?
聞き返そうとしたが、その時沢村の顔は軽いドラッグでも
キメたみたいに恍惚としていた。
駄目だ。馬鹿は置き去りにしておこう。
その時、新田尚子と俺の目が合った。
その瞬間、世界がまるでビデオみたいに
スローモーションになったような錯覚を覚えた。
長い長い1秒間。
俺はその間、微かにも目を逸らす事は無かった。

「新田尚子か・・・」

俺はどうしても新田尚子の事が気になった。


その夜、ニュースで、テロ対策用に、
天然痘のワクチンを大量に集めていると言っていた。
俺はテロに対して怒りを覚えている。
そして、テロに対する武力の報復も。
どっちも、自分の行為を正当化しているだけであり、
その為に用いる手段が気に食わない。
とか言って、殺されるのが嫌なだけなくせに。
死にたいとか言ってんのに、殺される事は否む。
なんなんだ俺は?