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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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4. 愛を知らず

また、体育。今日はバレーボール。やってられるか。
沢村と二人、体調不良の理由で見学。
さっきから体育館にラバーの擦れ合う、キュッ、という
生音が耳に心地悪い。
「あなたは神です」
あれから沢村は、事ある度に生活物資以外にも
奇異な話題を運んで来た。これも、一例だ。
「ここに、赤いボタンがあります。これは『絶望』です。
これを押すと、核戦争が起きて、人類は絶滅します。
しかし、その隣にある青いボタン。
これは『希望』です。これを押すと全人類は
過去の過ちに気付き、核爆弾を一斉に廃棄します。
さあどうします。どっちを押しますか?」
「とーぜん赤。連打する」
「何の躊躇も無いね」
「本当連打する。バネがねじ切れるまで」
「高橋名人の16連射並みに?」
「そうそう。懐かしいなぁ。あれバネ入れてるんだぜ。
こんなふうに。16連射ああああ!!!!」
・・・興奮し過ぎた。大きな声を出し過ぎた。
サーブを打とうとしていた男子がこっちを振り返る。
見んじゃねぇよ。羽虫を払うように、競技を再開させる。
ふう、と一息付けて、羞恥心を悟られないように
冷静を装う。
「思うんだ。どいつもこいつも、
みんないっぺんに死なねぇかなって」
「人類みんな死ぬ?女も?」
「当たり前だろ」
「そうかぁ。沖ちゃん、愛についてどう思う?」
「はぁ?」
また話題が飛んだ。サイパンから新潟。
「愛ですよ。やっぱ」
「何を急にぬかしてるんだよ。リストカットマンが」
「隣のクラスに霧岡さんて居るじゃん。
知らないかなぁ。マジかわいくない?」
「知らない。興味無い」
「彼女の前では、枯れた花も息を吹き返すと・・・」
と、突然、沢村がねぶるような視線で
女子の方を見回し始めた。
不審者一人確保。警官がいたら、絶対捕まるな。
「あっ!いた!ほら、あれ!あそこに二人組いるでしょ。
あの奥のが霧岡怜奈さん」
そっちに目をやると、バレーの試合を体育座りで待つ、
女子生徒らしき二人組がかたまって居た。
その奥の女子。あれが霧岡怜奈か。
成程、今時珍しい黒髪が頭の後ろで纏まって、
清純を絵に描いたようなイメージと
自己主張の強過ぎない、それでいて
人ごみに紛れても埋もれてしまいそうにない、
いかにもアイドル系の顔立ちをしていた。
150台前半と思われる低い身長もいい感じ。