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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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21. エピローグ


病院で、沢村と話す機会があった。
あいつはベッドの上、俺は松葉杖。
「俺の足はもう今までみたいに走れないんだって」
「そっかぁ。でも、そんなに惜しくもないんでしょ?」
やはり、沢村には全部見透かされてるようだ。
「足の速さとかじゃなくて・・・俺に出来る事を
一から見つけ直す事にするよ」
「そうだね。僕も退院したらまた努力とかいう格好悪い事
してみようかな」
久しぶりに二人して笑った。沢村は、笑う度に
まだ傷口が痛むらしかった。
「女に興味無いとか言ってたけどさぁ・・・あの・・・
もし、俺がお前より先に
童貞捨てたら、どうする?」
「殺す」
「・・・」
「でも、逐一報告するなら、許す。
つうかやれ」
そういうと、沢村は、笑い声を立てずに笑顔を見せた。
俺も不覚にもつられて笑顔を見せた。
「官能小説の一本でも書いてやろうか?」
「いらないよ」
沢村は、精神科にも通うようになると言った。
精神科なんて言ったってカウンセリングだけじゃ
退屈だろう、と聞くと、
「んな事ねぇよ。精神科には霧岡さんも居るしな」
全く、転んでも死なない、呆れた幽霊だ。
「じゃあな」
「もう帰るのかよ」
「約束があるんだ」

そう、このどうしようもない世界でも、
俺に出来る事を見つけるんだ。

俺は、新田さんとの待ち合わせ場所に、向かった。
俺はそれを見つける。彼女が笑顔で待っていてくれる。
このクソみたいな世界で、未来の事だけ想像するのも、
悪くはない。そう思った。