【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】
15. 割譲
北島のおっさんから、連絡があった。
沢村が、刺されて病院に居る。
うわ言でずっと、「相島沖史」と言っていたけど、
知り合いか、と。
俺はすぐに病院に駆け付けた。
小奇麗な廊下に、不釣合いな格好の
北島のおっさんはすぐに見つかった。
「どうなんだ、容態は」
「知らねぇ。ずっと手術中だ」
手術室の上には、ずっと赤いランプが、点滅したままだった。
沢村・・・。
なんでだよ。なんでこんなことになるんだよ。
その時、背筋に冷たい感覚が走り、
はっと、気付いた。俺は、沢村に心の領域を明け渡していた。
沢村が刺された、と聞いて、一抹の不安が過ぎった。
沢村が死んだら・・・俺は・・・!!!
俺は沢村の中に友人を求めていた。
何時の間にか望みすぎてしまっていた。
俺は・・・幽霊の範疇を超えてしまっていた。
もう・・・駄目だ・・・。
幽霊失格だ・・・。
死んでしまおうか・・・。
と、その時、何かに気付いた。
はぁ、はぁ。
聞こえる吐息。
何時の間にか、新田さんが息を切らして俺の隣で
手を膝に着いていた。
作品名:【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】 作家名:砂義出雲