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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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14. 幽霊、刺される

公園は、深夜2時でも、街灯の光が下品に照らしている。
その前のファミマに、若い男が一人。
明るい茶髪に、両耳のピアス。
確かに、顔の造りだけは良く、外見だけは
ホストか何かのように見える。
「常松智司ってのは、あんた?」
沢村現はここに来ていた。
「なんだあんた。女が買いたいのか?
それとも、クスリでもやってんのか?
普通の様子じゃねぇぞ、イカれてるみてぇだ」
「そうなんだ、実は」
沢村は刃渡り20cmのナイフを取り出して、
大仰に振り回してみせた。
「な、何だよ!!!お前気違いか!!!」
「気違い・・・いいねぇ。
ここでクイズです。さて私は誰でしょう?
A 暑さにやられて頭のおかしくなっちゃった気違い。
B 輪姦された少女のヒーロー気取りの気違い。
C 誰でもいいから殺したい気違い」
「知らねぇよ!!この気違いが!!」
「常松智司・・・殺される理由が解らないと見える。
怖いか?」
「ふざけんな、ガキがああ!!!」
常松も懐からバタフライナイフを取り出す。
「よーし、こっからは命の雪合戦です。
雪なんか降ってねぇけど」
「何だよ、お前、一体何なんだよ!!」
「幽霊だ」
「おい・・・来んなよ・・・刺すぞ・・・!!」
「俺も刺すぞ」
「うわああ!!!!!!!」
ごりっ、という感触。
ケンタッキーフライドチキンの
軟骨にフォークを突き立てた感触がした。

常松のナイフの先端は、実にスムーズに沢村の鳩尾に
吸収されていた。
沢村のナイフは、明後日の方角を突き刺している。

沢村が、にたあっ、と笑うのを、殆ど放心状態の
常松は遠い世界で、安物のサスペンスドラマを
見るような感覚で見ていた。

「どうだ、常松。人を殺す気分ってのは?」
「な、なんだよ・・・お前は・・・」
「死ぬほど痛えよ」
それだけ言うと、沢村はかくんと膝を落とし、
自分の投射している影の上に、前のめりにくずおれた。

まだ常松にはリアリティが持てない。

俺の目の前で血を流して倒れているこいつは誰だ?
俺が・・・殺人犯?

ナイフにべっとり着いた血糊が
抗えようのない現実を突き付けてくる。

「うわああああああ!!!!!!!!!」

抜かなきゃ。

常松は沢村からナイフを緩慢に抜いた。

ぬちゃり、と言う音と共に、それまで堰き止めていた