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【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】

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9. 幽霊、渇望する

夏休みになった。
あれから、沢村と、性欲について話す機会があった。
「なぁ、男なんて、本質はエロだよな」
「何?いきなり。エロに決まってるんじゃないの。
特に、高校生でしょ、ぼくら。男性の性欲のピークは
20前後だって聞いたことあるよ」
「なあ沢村、その・・・エロい事に罪悪感を感じた
事はあるか?射精の瞬間の罪悪感とか」
「自慰行為最高!」
沢村はこっちが恥ずかしくなるような大声でそう叫んだ。
「ジーク、手淫っすよ。罪悪感とかそんな事考えてたら、
オナニーの意味が無いっしょ。快楽の為にやるんだから」
「・・・マジで?うーむ、そうか・・・」
「毎日、霧岡さんでしてるよ!」
「また霧岡さんかよ」
「・・・・・・」
「・・・どうした?」
「・・・本当に俺、霧岡さん超好きィくて・・・」
「うん、それで?」
「・・・さすがに虚しくなってきた・・・」
「・・・そうなのか?」
「もう、だめだよ。眺めるだけじゃ、満足できそうにない。
彼女の匂いを嗅ぎたい。彼女の髪を顔に巻き付けたい。
彼女の肌の上に舌を滑らせたい」
「おい、沢村、お前幽霊じゃねぇのか。
与えられる以上の物を望むなよ。絶望する事になるぞ」
「五月蝿い!」
幼児がするようにヒステリックに叫ぶ。
こんなに激昂した沢村を始めて見た。
「僕はねぇ、沖ちゃんと違って、幽霊だけど、
そこまで温度は低くないからね!
幸せな生活の為に努力する、別に当たり前の事だろ?」
「なあ、別に俺は・・・」
「僕は、絶対に彼女とお近づきになってみせる。
別に金を使って売春婦なんかと遊ばなくたっていいんだ」

沢村は、とてもいい顔をして、そう言った。
ようやく解った。俺への当て擦りなのだ。
俺が、最近新田さんと仲が良いのが、実は羨ましいのだ。
金なんか使ってないっつうのに・・・。

そして2日後、顔面をぐしゃぐしゃにした沢村が、
俺の所にやってきた。

霧岡怜奈には彼氏が居た。
沢村は踏み込み過ぎて知り過ぎてしまったんだ。

だから、絶望するって言ったのに。
幽霊は幽霊のまま暮らすって、神と契約したんだから。