【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】
DJのダレン・エマーソンっつうヤツが抜けて、
2人組になったんだ。今度の新しいアルバムが
どうなってるか、今評論家の間ですげー議論の的なんだぜ」
「へー。じゃああたしはね、
ノー・ユース・フォー・ネームのアルバム貸そうか。
いや、マジで。すげーカッコいいっつーの。
スリーピースのバンドなんだけどね・・・」
俺達は、他愛も無い話ばかりしている。
アマチュア売春婦と、厭世的な幽霊もどきが、
奇妙な事に至って健全な音楽に関する会話をしている。
新田さんに売りの話を直接聞いた事は無い。
俺にはどうでもいいことだと思ったし、
彼女自身が話したくなければ、それでいい。
というか、彼女自身はどう思ってるんだろう?
「ねぇ」
「ん」
俺達が慰めにもならないキスをしてる時、
たまに新田さんがこう聞く事がある。
「やらなくていいの」
「いや・・・いいや」
「そう?」
それからまた太陽を待つように唇を求め合う。
多分、ここに愛なんて物は無いんだろう。
俺には、永遠に愛なんて物が解らないのかもしれない。
正直、俺の頭ん中はエロい事で一杯だ。
いつだってそればかり、そのことばかり考えている。
俺は、煩悩の犬だ。
でも、純粋にエロに走った事は、まだ一度も無い。
この踏ん切りがつかないのは、
頭の何処かでまだ、他人と繋がりを持ちたくないという
気持ちと、その快楽を知ってしまえば
もう抜け出せなくなってしまうんでは無いか、
という気持ちが姑息にも働いているんだと思う。
都会で暮らす連中が、平日にはそれぞれ働きながら
週一度のセックスだけで繋がるような、
洗練された男女交際は、俺にはやっぱ無理なのかも。
その日の夜考えたこと。
クリスマス、サマーシーズンなどの
なめくさった行事の時、
人間は発情期を迎える。
そして、日本中にいる、80%の
ヒマな男はこう考える。
「なんとか彼女見つけて一発!」
ところが女はこう考える。
「素敵な時間を彼氏と・・」
死んじゃって下さい。
このギャップが生んだ悲劇の一例として、
夏明けや年明けに「プチセブン」に
性病の被害報告を投書するのが関の山です。
女子の初体験の平均年齢が年々下がっているのは、
必要以上に処女喪失を望む女子が急増している
っていうことなのかもしれない。
これってメディア・リテラシー?ちょい違うか。
作品名:【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】 作家名:砂義出雲