【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】
6. 煩悩の犬
例えば、幼稚園の頃、
すっぽんぽんの女の子を見ても
別に何とも思わなかった。
(最も、世の大人の中に、何とも思う方は沢山居るのですが
いけないご趣味と言う事で、大人しくお縄を頂戴して下さい)
初めて生理が来た時、身体の単なる二次性徴としてでなく、
それの本当の「意味」を理解できる女子小学生は
何人ぐらい居るのか?
何と言うか、エロい事が確かにある、
この世の成人の中に存在する、それも密接に、という時点で、
昔から俺は、大人を軽蔑していた気がする。
軽蔑・・・だろうか?憧れも四分の一ぐらい混じったような、
複雑な感情。
不思議なほど、当事者意識は欠落していた。
「新田尚子に会ったのぉ!?」
沢村に話したら、偉く素っ頓狂な声を上げた後、
やおら俺の股間を掴んで来た。
「・・・いくらでやったの」
「な、何だよそれ」
沢村は犬のように舌を出して、『おあずけ』の
ポーズをしている。
「新田尚子は汚れた女だってことだよ。
その・・・ぶっちゃけ、売女なんだ。
金で、身体も、下手すれば心まで売るって噂だよ」
「それって確かな情報?」
「有名なんだよ、その・・・新田尚子は売女だって。
性欲の固まりみたいな男子高校生相手にエロを売るのは、
ロシアや北朝鮮で吉野家を開くようなもんだからね。
割のいいバイトどころじゃないよ。
下手すりゃ家が建つとか建たないとか。
うちのクラスでも、実は五分の一の男子が
既に相手してもらってるとかって話。
風俗に行くより、ずっと気軽で、みんなやってるってね。
ああ〜。しょうがねぇんだよなぁ〜。
何であんなのが霧岡さんといつも一緒に居るんだよ〜。
影響されたらどうしてくれんだよぉ」
「そんな悪い奴じゃ無いんじゃねぇ?」
「まあ、別に僕はどうでもいいんだけどさ。
つうか、沖ちゃん、それは人付き合いを望んでるの?」
「違うって。ちゃんと言ったぜ。心の領域は
明け渡さないって。それになぁ、これは望んだんじゃ
なくて、労せずして転がり込んできた人間関係。
だから失くなっても、絶望しないから、平気だよ」
その日、沢村と別れた後、俺は新田さんと会っていた。
「聴いたよ。アンダーワールド。カッコいいじゃん」
「おう。どの曲が良かった?」
「ボーンスリッピー」
「アンダーワールドは、このアルバムから、中心だった
作品名:【黒歴史】 全速力で走る霊 【2002年(18歳)】 作家名:砂義出雲